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ツアープロは年間で何足のゴルフシューズを使う?何ラウンドくらいが機能面の寿命か知ってる?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第38回

2023/12/19 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフシューズ

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真提供/篠原嗣典

ゴルフスパイク?ブランドのゴルフシューズが一生物だった時代があった

ゴルフシューズ,フットジョイ

「初心者が、ゴルフ用具を揃える予算の内の半分はゴルフシューズにしなさい」昭和の時代。ゴルフシューズを重く見るのはセオリーでした。

1つには、国内のコースの95%以上は歩きのゴルフだったので、靴擦れなどで痛い思いをしないように、という配慮だったのですが、基本的には、当時のゴルフ用品業界には、“ゴルフシューズ神話”みたいなものあったことの影響が強かったからなのです。

ゴルフの歴史を振り返ると、専門のゴルフシューズが出現したのは近代ゴルフになってからで、初期のゴルフシューズは、スパイクレスシューズのように、シューズの裏に三角錐の突起を取り付けて、芝生の上で滑りにくくしたものでした。それが20世紀前半まで続きます。

第二次世界大戦が終わって、20世紀後半になると、ゴルフシューズは、ゴルフスパイクと呼ばれる時代に突入しました。米国で、ソールの裏に付けた金属製の鋲をネジで交換できるようになったゴルフシューズが出現して、一気に広まっていったのです。このシューズはゴルフスパイクと呼ぶようになりました。

戦争で戦車の厚い装甲を打ち抜くために開発されたタングステンという素材が、世界が平和になると大量に余るようになり、その使い道として、高い耐久性が必要だったゴルフスパイクの鋲に最適だったからと分析する歴史家もいますが、タングステンという素材は、ゴルフクラブの重量を調整する重い素材として、現在も使われています。

この頃のゴルフスパイクは、本革で作られているものが主流で、フットジョイとエトニックが二大ブランドで、ゴルファーの憧れでした。かなりの高額商品でしたが、大切に管理すれば長持ちしましたし、仮に革が裂けてしまうようなことがあっても、アッパーやソールなどのパーツごとの交換が可能で、一生物のシューズとして使えたのです。

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本革が最高という時代は長く続きましたが、人工皮革が進化したり、日本は雨が多いので、防水技術の飛躍的な向上があったりして、20世紀末から21世紀にかけて、ゴルフスパイクは、ゴルフシューズに戻っていく大変換期を迎えます。

スパイクの傷に弱い洋芝のグリーンが増えて、経済が低迷して、ゴルフコースのクラブハウスの絨毯の寿命を延ばす必要が出てきたという背景があり、歩きのゴルフが珍しくなっていったという流れもありましたが、スパイクシューズを禁止して、樹脂製の鋲のソフトスパイクシューズになっていったのです。

現在は、ソフトスパイクシューズから、鋲がないゴム底のスパイクレスシューズが主流になっていく境目だといわれています。ゴルファーが自分の価値観で、ゴルフシューズを選ぶのが当たり前という時代が来ています。

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ツアープロは年間で何足のゴルフシューズを使うか知っていますか?

「このゴルフシューズ、限定版で、○○プロと全く同じ物なんです!」ゴルフクラブは、憧れのプロと同じ物はむずかしすぎて使えないけれど、シューズなら使えるということで、プロと同じ物を選ぼうとするゴルファーは多いそうです。

トッププロが使用しているアイテムが悪い訳はない、という理屈は、説得力があります。テレビ中継などでも、どのメーカーのシューズなのか?何のブランドのシューズか?注目すればすぐにわかります。

さて、プロのシューズは、常にピカピカの新品のように見えますが、専門のシューズ磨き係がいるのでしょうか?
答えは、ノーです。トッププロは、新品のシューズを常に供給されているのです。

複数のメーカーのツアープロへのシューズ供給担当者に取材をしてみましたが、ツアープロの8割は、1試合1足の供給を受けているそうです。練習日と4日間履いたシューズは、それでお役御免となり、ファンイベントなどの景品にしたり、寄付したりするそうです。

残りの2割のツアープロは、2試合で1足というパターンが半分ぐらいいて、中には、1日に1足で、毎日が新品というケースもあるそうです。験担ぎなどで同じシューズを履き続けても、使用が一ヶ月を超えることはないそうです。

テレビ中継を意識して新品にしているのか?と質問したところ、それだけではなく、シューズの機能がフルに発揮されるのが新品の短い期間だけだからです、という答えでした。

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ゴルフシューズの特性を知ろう

色々なメーカーのゴルフシューズの開発担当にも、このことについて、取材をしてみました。トッププロが求めるシューズの機能は、新品をピークに徐々に落ちていくのは事実なのだそうです。
ビックリすることに、歩いてゴルフをする場合は、20ラウンドぐらいがゴルフシューズの機能性の寿命なのだと異口同音に、回答がありました。

普通に歩行したり、ゴルフをプレーするというだけであれば、ゴルフシューズは100ラウンドでも問題なく使えるそうですが、それは、スニーカーやウォーキングシューズでも可能で、ゴルフシューズだけにしかできないという機能については、履き慣れた頃には発揮されなくなってしまうのだそうです。

ゴルフシューズだけにしかできない機能とは…

●足をロックして安定させ、スイングスピードが増すことで生まれる飛距離
●少しの緩みが原因になって、方向性が悪くなったり、芯に当たりにくくなったりすることを防ぐ安定性

ゴルフシューズほど期待を裏切らないゴルフアイテムはない!

ゴルフシューズ,スパイクレスシューズ

数千円で売っているゴルフシューズもあれば、数万円するゴルフシューズもあります。「何が違うのでしょうか?」という質問を時々受けます。

「ゴルフシューズは、値段が裏切らない唯一のゴルフアイテムです」と答えています。つまり、高額なシューズには、しっかりした理由があり、それがちゃんと機能するのです。機能が必要なゴルファーは、高額なシューズを選択すれば良いし、不要だと考えるなら、安いシューズでもOKです。

わかりづらいので、ゴルフシューズの優秀さの話は、都市伝説に過ぎないと言い切る人たちもいます。しかし、いわゆる、ショットメーカーと呼ばれるプロ並みの精度でボールを打てるアマチュアの上級者は、ゴルフシューズは何でも良い、というケースは皆無です。

実験として、新品のツアー用のシューズと普通のスニーカーで、プレーをしてもらうと、完全に前者のほうが良いゴルフになって、スコアもハーフで数打という明確な差が出ます。

少し厳しいことを書くと、100を切る程度であれば、ショットメーカーになる必要はないので、ゴルフシューズの機能がスコアに露骨に出たりはしませんから、わからないのは仕方がありません。
また、足のサイズよりも大きめで、ユルユル感を優先してゴルフシューズを選ぶ場合も、ゴルフシューズ独特の機能を堪能することはむずかしいのです。

ゴルフシューズの厳密な寿命は20ラウンド程度だという話をゴルフ熱心な若いゴルファーにしてみました。彼は、ゴルフ歴2年半。年間のラウンド数は20ラウンド前後ということでした。「そうなんですか?どのシューズも、10ラウンドぐらいしか履かずに、新しくしていたから気付きませんでした」

驚かそうとしたのに、もっと驚いた話が出てきました。思わず聞いてしまいました。「どうして、そんな短いスパンでシューズを替えているの?」

「夏のウェアに合わせたシューズも、新しい内なら良い値段で売れますから、そのお金に少し足せば、冬のウェアに合っている新しいシューズを買うことができます。そうして回していると、10ラウンドぐらいで交換になるというわけです。それって、ダメなことですか?」

ダメではないよ、と即答しながら、若いゴルファーの価値観に感心しました。彼の言う通りなら、お得感も感じさせます。時代は彼らを中心に動いていくのだと、朧気に考えたりもしたのです。

新しいシューズのほうが、気持ちが良いので、ゴルフのモチベーションが上がるのだとも聞きました。それは共感できます。足元を見れば、その人の多くがわかるものだ、とショップに勤務しているときに、接客術の1つとして教わりました。その教訓は、確かに効力があり、その後もビジネスの世界で、助けられたことが何度もありました。

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要は考え方次第

ゴルファーも、シューズを見れば…とは言いませんけれど、ゴルフシューズも実に多弁なアイテムです。油断をすれば、大恥をかくこともあります。あらゆる意味で、ゴルフシューズは、良くも悪くもゴルファーを裏切りません。自分の足元をチェックすることもゴルフの内なのです。

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ゴルフシューズの質問を受けることはたくさんあります。

初心者はスパイクレスが楽です。ソールが硬い感覚が好きならソフトスパイクかなぁ。手入れが楽なので人工皮革をオススメしますが、一度は本革のシューズも経験してみるべきかも。歩きやすさを優先するのが基本です。
誠意を持って回答していますが、実は、ゴルファーの数だけ正解があるのだと考えているのです。

例えば、僕は、白ベースのシューズしか履きません。理由は、ショートゲームにシューズの色が影響してしまうからです。個人的なこだわりですが、カラーにこだわるゴルファーはたくさんいます。

ゴルフをすればするほど、ゴルフシューズは愛おしいアイテムになりますが、同時に、ゴルフシューズは消耗品でもあるのです。寿命は考え方次第で、何年間も大切に愛用しているゴルフシューズは、そのゴルファーの人となりを伝えているようだと感動することもあります。

ゴルフシューズを一生物だという人はいなくなりました。頻繁に替えるものだと考えて楽しむゴルファーも育っています。色々な選択肢がある時代に、ゴルフをしている幸せを噛みしめるアイテムとして、ゴルフシューズは存在しているのかもしれません。

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篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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