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ゴルフボールの値段と飛距離って関係あるの?秘密の真相!

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第44回

2022/11/17 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフボール

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真提供/篠原嗣典

ゴルフボールは鏡のようなもの、自分が映るだけではないので注意せよ!

「ゴルフボールって、高いものほど、飛ぶんですか?」
時々、質問されます。答えは簡単なのですが、ついついお節介でボールの話を長々としてしまいます。

ゴルフボールは、全てのストロークで使う唯一のゴルフ用具です。飛距離も必要、乗せるのにも必要、寄せるのにも、入れるのにも必要なのです。14本のクラブがそれぞれの役割に特化しているのと比べると、その全てのクラブと一緒に仕事をするゴルフボールは、万能であることを求められています。

そんなに重要なのに、ゴルフボールほど軽く見られているゴルフ用具もありません。ゴルフボールにこだわっているのは、ツアープロと、ごく一部のアマチュアゴルファーだけなのです。

改めて観察してみると、ゴルフボールの種類は凄い数があります。小さなショップでも10種類ぐらいはラインナップされていますし、大きなショップなら40種類を超えるボールを取り扱っていたりもします。

価格もまさにピンキリで一番安いものを“1”としたとしたら、高額なものは“6”にもなる。つまり、最安値のものに比べると、高級なボールは6倍の価格なのです。

これが問題を複雑にしているのです。

最安値のボールと高級なボールは、6倍の価値があるのか?当たり前ですが、飛距離で比較して違いはあったとしても、6倍どころか、2倍の差にもならないのです。

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ゴルフボールは、性格の一端が見える

「よくわからないからゴルフボールはとりあえず、安いもので良いや」

ということになる最初の一歩は、ボールの機能ははっきり目に見えず、比較をしにくいのが原因です。

実際にボールの機能がスコアに影響するのは、それなりのレベルにならないとむずかしいので、ある意味よくわからないから安いものでも良いというのは、間違ってはいないという考え方もあります。

ゴルフボールは、多弁なゴルフ用具です。本人が意図しなくとも、同伴者には名刺を渡すような自己紹介をしてしまっていることがあります。使用しているボールによって、ちょっとした占いができるみたいなイメージです。

クラブは最新なのに中古のロストボールを使っていたりすれば、不思議なバランス感覚の人だと思わせますし、最先端のボールを傷だらけになっても何ラウンドも使う人と、少しでも傷が付けば数ホールしか使っていなくとも交換してしまう人も、性格の一端が見える気がします。

ゴルフショップで働いている頃、ゴルフボールはゴルファーを映す鏡だと教わりました。鏡を見る余裕がないお客様もいれば、本来の自分よりも立派に映る鏡が欲しいお客様もいます。余裕を持ってストックするお客様もいれば、来店のたびに新しいボールを試したいお客様もいます。

自分が使っているゴルフボールを再確認してみると、改めて自分のゴルフが視えるかもしれません。

ゴルフボールは科学の結晶、高額なのには理由がある

ゴルフボール

ゴルフ用具の中で、ゴルフボールほどたくさんの特許があり、全く同じに見えても大きな差があるアイテムはありません。それがわかってくると、ゴルフボール選びというのは本当に面白くて、かつ、辛いものになります。

ボールは自分を映す鏡です。隠そうとしても自分自身が映るので、ゴルファーとしての現実がシビアにわかってしまうからです。

現在ツアーボールと呼ばれるトッププロが使用するボールは、基本的には2年でモデルチェンジをします。開発するスタッフは多額の開発費を使って、新しい素材や発明をボールに取り入れることで、使用しているプロの成績向上を狙います。

面白いのは、新しいボールにシフトしないトッププロもいることです。メーカーは、前モデルのボールも契約プロが要請すれば、供給し続けるのです。これは米ツアーなどでは、調査会社が毎週、調査結果を公表するので調べるとすぐにわかります。

良かれと思って新しく開発したボールが受け入れられないのには理由があります。改革された部分が、そのトッププロにとって不必要だったり、ときには邪魔になったりするのです。でも、同じ新機能がマッチして大躍進するプロもいます。

新しいボールがツアー供給される時期に、多弁にその辺りの事情を発信してしまうのです。ボールは消耗品なのであまりそういう称号をつけない傾向がありますが、ツアーボールには名器と呼ぶに相応しい成果を残しているものがいくつもあります。

ツアーボールが高額なのは、膨大な開発費がかかっているということと、トッププロには無償提供ですから、そういう部分も宣伝費としてボール代に入っているからです。

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「プロ用のツアーボールのことがわかっても、普通のアマチュアゴルファーには関係ないじゃない?」と言う人もいますが、例えばそのボールの女子プロの成績に注目してみるとわかってくることがあります。

女子プロは一般的な男性とスイングのスペックが似ていますから、彼女たちが成果を出しているボールは、ツアーボールでもアマチュアが使いやすいものなのです。

逆に男子プロは凄いのに女子プロの使用者はパッとしない、という場合は、ヘッドスピードが速いゴルファーのためにチューニングされていて、普通のゴルファーには手に負えない可能性が高いといえます。

自動車の場合、レースに勝つために次々に新しい改革をする自動車メーカーはたくさんあります。その現場で生まれたテクノロジーは、数年後、一般の市販車に安全性を高めるための機能や、快適性能を上げる機能として搭載されます。

ゴルフボールの場合も同様なのです。普通のゴルファー用のブランドのボールは、ツアープロに供給したボールのテクノロジーや新素材を元にして、扱いやすいようにチューニングし直したものが搭載されるからです。

しかし、そんなハイレベルな機能などは普通のゴルファーにはわからないので、裸の王様のように宣伝に踊らされて、高額なボールを買うことに抵抗があるという意見もあります。確かにそういう部分があり、間違いだと言い切れません。

高額なボールは飛んで、チープなボールは飛ばないって、本当?

ゴルフボール

「結局、どのボールが一番飛ぶのでしょうか?」

興奮してボールの話をしている僕に乗ってこないゴルファーのほうが多いので、息継ぎのタイミングを見計らってこんな質問を受けることがあります。気持ちは痛いほどわかります。ボールで最もわかりやすい機能は、飛距離性能だからです。

とはいえ、最初に書いたように飛距離は何倍という形では表面化しません。科学力を結晶したボールは、市場にあるものでそれなりのメーカーのものであれば、最も飛ぶものと飛ばないものの差は、10〜15ヤード程度だからです。

ミスショットが多く、ナイスショットのほうが少ないゴルファーの場合、15ヤードぐらいはその中に埋没してしまいます。つまり、飛ぶボールと飛ばないボールの判定がむずかしいのです。ナイスショットでの比較でなければ、飛距離性能の比較はできません。

わかりやすく高額なボールは飛んで、チープな価格のボールは飛ばないという説もあります。
これは、一部の外国製のボールには当てはまります。高額なものが飛び、チープなものは飛ばないという考え方が、企業としてのフェアで、ユーザーの信頼を裏切らないと信じているのだと推測されます。

しかし現在、世界一のボールメーカーであるブリヂストンスポーツのボールは、その法則が当てはまりません。一つには、開発チームがボール別になっていて、競って最高のものを作ろうとする企業体質があることです。

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予算の違いなどで高額なボールは最先端、チープなボールは一世代前のテクノロジーで開発するのですが、チープなボールがより洗練されて、普通のゴルファーには飛ぶということが起きるのです。

安くとも最高のボールを供給するという考え方は、古い職人体質だと非難があるとも耳にしますが、個人的には応援する意味で、安価でも信頼できるボールの相談を受けると推薦しています。

高性能のボールを使ったほうが早くゴルフが上達する傾向は、確実にあるのです。予算的な意味で、ロストボールを使うゴルファーはたくさんいます。ゴルフ歴がそれなりなのに、ロストボール愛用者もいます。

ロストボールの問題点は、内部の劣化が見えないことです。元々飛ぶボールは、劣化していなければ飛距離が出て、劣化していれば1〜2番手は飛距離が落ちます。使い手にはそれがわからないので、精度が高くなっているはずなのに、スイングに余計な手を加えて、下手になっていくという悲劇が繰り返されていくのです。

ほんの少しの無知や勘違いで上達する道から迷い道に入ってしまうのもゴルフの怖い側面です。安価でも高性能のボールを使っていれば、迷い道に行くのを防げるのです。だから、短期で上達する例が増えるという単純な話です。

ゴルフボールにおける本当の飛距離性能は、実は最大飛距離ではなく、個体差が少ない安定性です。このテーマは、どのボールが飛ぶという話より、何倍もゴルフの上達に直結するのですけれど…それはまた、別のお話。




篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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