初打ち?打ち始め?始め良ければすべて良しというゴルフな1年を楽しもう!
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第51回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
初打ちはいつまで?決まりはあるの?どんな打ち始めが理想なのかも考えてみよう!
『一年の計は元旦にあり』といいます。2023年をどのように過ごすのか?何事も最初にちゃんと計画することが大切という“ことわざ”です。このことわざは、ゴルフでも有効だと信じているゴルファーがいます。僕もその一人です。
「初打ちはどうでしたか?」ゴルファー同士であれば、こんな質問を新年の挨拶のあとにするケースも多いと思います。さて、皆さんは初打ちはもう済ませたのでしょうか?もしくは、初打ちの予定はいつですか?
冬はゴルフをお休みしているというゴルファーもたくさんいます。春になったら、2023年のゴルフが始動します、というのもありです。
「春スタートは、初打ちとは言わないですよね?」言葉遊びみたいな範囲ですが、初詣と同じように初打ちにも定義があるのでしょうか?
初打ちは、気持ちの問題で正確な定義はありません。ただ、生真面目なゴルファーは初詣と同じような概念で定義していることが多いようです。
ちなみに初詣は、厳密には1月1日から3日の三が日に詣でるものだそうです。どうしてもスケジュールが合わない場合は、松の内が終わるまではセーフというのが現在の常識となっています。
面白いことに、関東では松の内は1月7日まで、関西では1月15日までと違いがあります。
神社によっては、節分(2023年は2月3日)までは初詣としてセーフ、ということになっている所もあります。初打ちもこの考え方で良いのだと定義すれば、誰からも文句は出ないはずです。
僕の昨年の初打ちは、1月3日でした。2023年は、1月7日に初打ちをする予定でしたが、試打のスケジュールの関係で年末になって急遽変更しました。
理想的な初打ちについて質問されることがありますが、自己満足で良いと思います。言葉を変えると、自然にというのが、もっとも理想に近いものだと考えています。一人では原則として初打ちはできないからです。
「新年ゴルフしようぜ」とか「休みの間にゴルフしようよ」という仲間がいて、自然と初打ちになるのが理想です。
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初打ちと打ち始めを使い分ければ、ゴルフはもっと面白くなる!
僕は20代の頃、元旦にゴルフをするようにしていました。ゴルフ愛が試されているような気持ちがベースになっていたのです。
なんだかんだ言っても、元旦にゴルフをするぐらい大好きなのだという証明を求めていたような気がします。
昭和の時代のゴルフコースのお正月は特別な時空を楽しめました。
コースによって違いはありましたが、多くのコースが競い合うようにしてイベントとして盛り上げていました。一流を自負するようなコースでは、三が日は会員のみのプレーしか認めないことも普通にありました。
元日はお休みのコースが多かったですが、いずれにしても、1年の最初の日の朝には、フロントの前に酒樽が持ち込まれて、鏡開きが行われるのです。
鏡開きはお餅を割るのではなく、酒樽の蓋を小槌で割る行事。仕事始めの行事として昭和の頃は、あちこちで見たものです。コースの名前やロゴと日付が入った升が用意されていて、樽酒は、升酒として振る舞われるのです。(升は持ち帰り可でした)
コースのスタッフも朝から乾杯には参加したりするわけです。コースの鏡開きに参加することは、特別なゴルファーとして認められる証でもありました。今なら、記念の升を自慢気にInstagramにアップするゴルファーが続発するはずです。(今でも極めて少しだけですが、年の初めに鏡開きをするコースは存在します)
昼前に餅つきをして、つきたてのお餅を振る舞うコースもありました。
ハーフを上がってきて寒いところに、つきたてのお餅がホカホカで美味しいのです。食事も忘れて、餅だけを食べて後半のスタートというときもありました。
このように、ワイワイしながら楽しくお祝いする時間を共有するだけでお正月のゴルフは成立したのです。初打ちを大切に思っているオールドゴルファーが多いのは、こういう経験の欠片が記憶の奥底でピカピカと輝いているからなのかもしれません。
つまりは、初打ちは儀式なのです。もちろん一年の計は元旦にあり的な感じで、目標を立てたりするのは素晴らしいことです。そのラウンドで達成できなくて当たり前です。1年かける目標であれば、尚更です。
儀式は色々縛りがあって、少し面倒臭いものです。それからすれば、打ち始めはもっと広く使って良いと考えています。初打ち=打ち始め、ということもあると思いますが、このドライバー今日が打ち始めです、というデビュー的な意味で使うのもありだと定義しているからです。
小さな小物まで含めれば、ゴルフは年間で両手の指でも足りない数のアイテムをデビューさせることが可能ですし、新しいスイングや戦略なども含めれば、常に打ち始めがあるゴルファーも少なからずいるはずです。
ゴルフの醍醐味の一つは、全く同じ経験ができないことです。厳密に考えれば全てのストロークは、その時、その場所、その環境で、たった1度しかありません。だから、ゴルフはやってもやっても飽きないのです。
無敵な打ち始めで、賢くゴルフを充実させるのが正解だ!
初打ちにしても、打ち始めにしても、2023年最初のゴルフは、寒い冬の内に済ませるのが僕のオススメです。理由は、真冬のゴルフコースは凜としていて面白いことがたくさんあるからです。
凍ったコースで、置きティーの利便性に感謝したり、カート道に落ちたボールのようにグリーンで跳ねたボールが遙か奥まで行ってしまって難儀したり。普段では考えられないような100ヤードもランがあるドライバーショットが打てたり、ある意味で異次元のゴルフがそこにはあります。
また、防寒のウェアの進化は日進月歩です。マイナスの気温でも、寒さをさほど感じることなくゴルフができます。スイングの妨げにならずに、ポカポカしてゴルフができることは、2023年にゴルフをしているゴルファーとして強烈な快感です。工夫が活きるという意味では、防寒ゴルフの成功は、スコアアップよりも何倍も簡単なところも良いのです。
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コースは基本的には空いています。日によっては、コース内でプレー中に誰にも会わないこともあります。まるで貸し切りです。シーンという字が見えてきそうなサイレントなコースでゴルフができるのは、ゴルフの神様からのプレゼントです。真冬ゴルフが初めてならば、打ち始めですし、いつであろうと初打ちです。真冬の装備を初めて使う場合だって同じです。
僕は、2023年の夏でゴルフ歴が45周年になります。生涯ラウンド数は、2000回に近いと思います。それでも、年に何度も打ち始めを楽しんでいます。新しいサングラス、新しいボールマーカー、新しいウェア、新しいアクセサリー。ボールは基本的には、常にニューボールです。
打ち始めを楽しめるかどうかは、頭の良さで決まるのだといつも思うのです。ゴルフを最高に好きだと、僕が思うシーンの多くは、本当の賢さが簡単に証明されるところです。残酷なのは、バカも露呈するところですが…
2023年、僕らはいくつの打ち始めを楽しめるのでしょうか?そう考えるとワクワクします。去年の自分より今年の自分のほうが、ゴルファーとして進化できるはずです。僕は毎年、それを目標の一つにしています。
今の自分は老いと戦っていますし、最強ではないのかもしれません。でも、力業の強さは衰えても、勝負師としての経験は確実に増えて、磨かれています。最強だった必勝のパターンが使えなくなった代わりに、勝ち方の別パターンが増えていることは、強さになります。
過去には、前年の自分に完敗してしまう年もありました。一気に何ランクもダウンしている自覚があって、ゴルフをやめてしまおうか、と思ったこともあります。でも、それらは結果的にはチャンスでした。リセットしたことで、前年の自分に挑戦して、勝つことがやさしくなったからです。
一年の計は元旦にあり。初打ちでも、打ち始めでもOKです。2023年の新しい自分を探すために、ゴルフは最高のゲームなのです。上手に賢く使い熟して、良い1年だったと振り返られるように楽しむのが正解なのです。
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篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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