ゴルフは4人1組が正式なの?意外と知らない、組み合わせに隠されたゴルフの裏側
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第53回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
「4人1組でないとプレー不可という未来」が来るって予言は当たるの?
先日、面白い愚痴を聞きました。
「3人で予約したのですが、1人が来られなくなって2人になったんです。2サムの割り増し料金が発生しますが、それでも良ければプレーできます、と言われたのでお願いしました。元々、3サムの割増料金が発生していたので、まあ同じぐらいの金額だろうと考えたのです。
プレー後に請求された金額は、ほぼ2名分の料金でした。1名のプレー代の8割ぐらいの金額が2サム割り増し料金としてプラスされていたのです。「詐欺じゃないか」と思いましたが、そのまま支払いました。しかし帰宅してから、ムカついてきて…」
この手の愚痴やトラブルを耳にすることが増えてきています。4人1組なら通常料金で、人数が減ったら割増料金で調整するのは、昭和時代のゴルフコースではむしろ普通のことでした。
ゴルフコースは、映画館やコンサートのように決められた座席を売るビジネスです。普通の会場と違うのは、全てが4人掛けの座席だということ。
満席でも、座席に2名ずつしか座っていないとしたら、売り上げは半分になってしまいます。
ビジネスとして、4人掛けの座席に4人ずつ座ってもらうか、割増料金を徴収するか、という努力をするのは当たり前なのかもしれません。
バブルが弾けて社用族のゴルファーが激減して、座席が埋まらなくなったゴルフコースは、ゼロよりはマシだということで、2人でも3人でも良いのでコースに来てください、という方針に変更しました。
満員ではなく、満席を目指しつつ平成の時代は過ぎたのです。
そして、令和のゴルフブームで、コースに来場するゴルファーが増えています。コースによっては満席が当たり前になって、キャンセル待ちも発生するようになりました。
次に狙うのは全ての4人掛け座席に4人が座るという満員御礼です。
“当コースは、4人1組を基本としています。それ以外の場合はプレー不可、または、割増料金が発生します”
“2サムの受付は2023年より平日のみとさせていただきます”
このようにインフォメーションするゴルフコースは、まだ多くはありませんが確実に増えてきています。
とはいえ、令和のゴルファーは自由であることが特徴です。自分たちのゴルフのスタイルに合わせて、納得できるコースでゴルフをすれば良いだけのことです。
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伝統を守り、歴史にこだわるなら2人1組が唯一の正解になる!
ゴルフコースの関係者の中には、こんなことを言う人がいます。
「ゴルフは、4人1組が伝統ですから、正しい形式に戻りつつあるのです」
2023年になってもスコットランドやアイルラインドには、2ボールでのプレーしか認めていないという伝統を守っているゴルフコースが存在します。ゴルフの歴史を調べれば一目瞭然で、元々の1組は、2サムなのです。ゴルフはマッチプレーの競技として育ってきたのです。基本は1対1の勝負だったわけです。
2ボールとか、2サムとか、表記が間違っています、と指摘してくる見識者もいるかもしれません。ゴルフ用語というのは面白いもので、当たり前だったものに呼び方がないままで、現在まで来ているということがいくつもあります。
○サムの「サム」は人のことですが、ゴルフ用語として正式に認められているのは3サムと、4サムです。ただしこれは競技形式の名称で、一般的に使っている3人1組とか、4人1組というのは、実は誤用なのです。
2ボールというのは、1つの組の中で2つのボールしか使わないという意味で、1対1か、1対2か、2対2(2人のチームは1つのボールを交互に打ちます)という組み合わせとなります。ちなみに2対2の対戦で、それぞれが4つのボールをプレーする形式は4ボールと呼びます。
遠回りしましたが、1対1の最もベーシックな組み合わせは、正式には「シングル」と呼びます。
2ボールでも、2サムでもないのです。
メジャートーナメントの決勝ラウンドになると、2人1組になるのはゴルフの伝統へのリスペクトなのです。ひと昔前のゴルフ規則のエチケットには、明確に2名1組の組み合わせがその他の全ての人数の組に優先すると明記されていました。
再び歴史を振り返ってみると、産業革命が世界で最初に起きた英国で余裕ができた貴族ではない人々がゴルフを始めるということでブームが起きたのです。ゴルフコースが次々に新設されましたが、それでも足りませんでした。
多くの人がプレーできるような工夫として、ストロークプレーを奨励することと同時に、4人1組でのプレーが広まっていきました。それがそのまま現在のゴルフに繋がっているのです。
昭和の頃シングルでプレーできるのは、クラブチャンピオンのマッチプレーぐらいでした。特別な組だと証明する赤い帽子をかぶったキャディがついた2人1組は、普通にプレーしている組を追い抜いてプレーする権利を与えられていました。
当日コース内ではそれが放送などで何度もインフォメーションされていました。そして一般の組でプレーしているゴルファーは、自分たちのプレーを一時中断して2人1組の選手を応援しながら、通り過ぎるのを待ったものだったのです。(今でも同様の慣習があるコースはあります)
平成になってあっという間に、2名1組でゴルフができるゴルフコースが当たり前になって、最初はかなり戸惑いました。申し訳ない、という気分になったからです。
ゴルフという冒険をご一緒する仲間は本当に大切なのだ!
3サムと4サム、そして2サムも用語として間違っているということは、少しゴルフの勉強をしたゴルファーであれば知っていて当たり前の知識です。そこで1組の人数を表す用語として、3バック、4バック、そして2バックとキャディバッグの数を利用しているケースもあります。
僕はゴルフの書き物をする際に誤用だと知った上で、2サムとか、3サムとかの表記を使用します。理由は、いちいち説明しながら書くのは字数の無駄になりますし、読み手に内容が伝わりにくくなるからです。
ここまで組のことを書いてきましたが、実はこの『組』も呼び方が揺れていると感じることがあります。正式には、単に「グループ」なのです。日本語のゴルフ規則では、組と訳されています。
しかし、組み合わせというケースもあればパーティーということもありますし、オールドゴルファーの中にはドローという呼び方もします。英語のグループがしっくりこないことが、カチッと固まらない原因なのだと思われます。
競技ゴルフでは組み合わせは委員会が決めますので、当日の朝に挨拶をしただけの知らない人と1日プレーします。そして、自分のスコアカードは同じ組の別の人が記載してくれて、自分も別の人のスコアカードを記載していくのが、正式なストロークプレーでのハウツーです。
なので、嫌でも最小限の関係性は生まれるのです。それを見越して、僕はゴルフを始めた直後からできるだけ知らない人とばかりプレーをさせられました。
「一緒に回る人の影響がスコアに出るようなゴルファーに、競技ゴルフに参加する資格はない」
ゴルフを教えてくれていた叔父の口癖でした。そのお陰で僕は、一緒にプレーする人が最低でも、最高でも、それがスコアに影響しないゴルフをすることができるようになりました。
しかし、40代の半ばから現在までの10年ぐらいは、気心の知れたゴルフ仲間や学生時代の同級生とばかりプレーする機会が増えて、ときにはワイワイガヤガヤしながらゴルフをするようになったのです。
スコアには相変わらず影響しませんが、ゴルフの楽しさや面白さは別なのだと、だいぶ遅咲きですが、やっとわかってきたのです。
何人1組で回るのがベスト?
誰とゴルフをするか、という要素でゴルフは何倍も楽しくなります。それを極めていけば最高のメンバーは、2人より、3人、3人より4人だということになるのかもしれません。
数えられるほどですが、日本国内には5人1組のプレーを認めているコースもあります。乗用カートが、4人プラスキャディを想定して5人乗りであることを逆手に取ったビジネスとして注目されました。
経験したことがあるゴルファーに聞くと、5人は楽しいよ、と肯定派とスロープレーが気になるからもういいや、という否定派に分かれるようです。
最高に楽しいゴルフになるのが確実なメンバーを何人集められるか?それが、何人1組が正解かを決める個別の判断基準になるのかもしれません。
僕の知っている範囲で書くと、意外なことに若いゴルファーが4人1組でプレーするのが増えているように感じます。理由を聞くと、4人1組だと3人とか2人よりも割引があって安くゴルフができるからなのだそうです。
最初に書いた割増料金と表裏一体な話なのですが、メンバーを集めるのに苦労はしない、とも聞きましたので頼もしいなぁ、と純粋に思いました。
4人1組が昔のように当たり前の慣習になる未来が来るほどに、ゴルファーの数が増えれば、それはそれとして良いことなのかもしれません。
個人的には、4人1組はプレー時間が遅いと感じることがあるので、ペースという意味で3人1組が最も気持ち良くプレーできると考えています。世の中の値上げムードの中で、ゴルフコースのプレー代もその流れに逆らえずに、値上げが始まっています。割引も、割り増しも、そういう空気が生んでいるのだと思います。
令和のゴルファーは自由にコースを選べますし、ゴルファーをやめることも自由なのです。昭和の頃には想像もできませんでしたが、「ゴルフはコスパが良い」と言い合える状況がいつまでも続くことを心から願っています。
結論として、何人1組でもゴルフができることが幸せなのです。
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篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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