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『それ、競技ゴルフでは…』が、いつでも通用するわけじゃない。柔軟思考でいきましょうよ!

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第54回

2023/01/22 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真提供/篠原嗣典

競技ゴルフでは、と言われると何でも通るというのは傲慢であり、ちょっと恥ずかしい大間違い?

先日、ある打合せで、こんな話が出ました。
「ある男性がドライバーで打ったボールが、レディースティー手前だった時は、レディースティーからプレーする女性のドライバーショットを先に打って、あとから男性が2打目を打つのが、正しい競技ルールなんですよね?」

『なんじゃ?それ?』と思いました。いわゆる公式ルールには、そんなことは1行も書かれていません。

「でも、その方法だとプレーが遅くなるので、迅速なプレーを奨励するならそれは無視しても良い、と思うのですけど」という話になったので、少し安心しました。

ゴルフの第1打目以降の打順は、遠方先打が基本です。このケースでも、男性が2打目を先に打って、レディースティーの前にボールが行ってから女性が第一打を打つのが正しい打順です。

どうして誤解が生まれたのかを推測すると、男女で行うペア競技なら、このようなローカルルールを採用している可能性があると気が付きました。

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ペア競技の1つに、そのホールのどちらか良いほうのスコアを選択して、そのホールのスコアとするという競技があるのです。この場合、グリーン上で採用されないパートナーが、採用する予定のパートナーのラインが見えるような位置まで、ワザとホールとは無関係の方向を狙って打ちます。

そして3パットや、4パットしてまで、パートナーのラインを教えるという禁じ手があるのです。それを防ぐために、遠方先打ではなく、打数優先のローカルルールを採用することがあります。

ペア競技は、競技ゴルフ初心者が経験として参加しやすいので、知識がないまま競技デビューが可能です。ローカルルールを正式なルールとして間違って覚えて帰ったとしたら、冒頭のような間違いが広まる可能性があります。

ゴルフでは時々、とんでもない都市伝説が広まっていくことがあります。その多くで「競技ゴルフでは」というワードが、説得力として機能しているので注意が必要です。

ハッキリと断言します。競技ゴルフは、ゴルフの上位種目ではありません。ゴルフという大きな括りの中に含まれた、小さい括りの特別な1つに過ぎないのです。

憧れたり、リスペクトをすることを否定はしませんが、神様のように間違いがない完璧なものと崇めるのは危険です。

ティーイングエリアでの打順は多弁!上手にハウツーを使い熟せるゴルフが尊敬される!

ティーイングエリア

「誰から打つのか決めましょう」打順決めのくじ引きの棒を人数分持ってきてくれる気遣いができるゴルファーが時々います。小さなことですが、こういう積み重ねが、ゴルフを充実させる力になることもあるのが、ゴルフの醍醐味でもあります。

ちなみにこの打順のくじ引きは、日本発祥です。欧米では、丸くなってティーを飛ばして、先が向いた人から時計回りで打つ、みたいな決め方が一般的です。ショップにいる頃、イングランドから来たゴルファーに、お土産にあのくじ引きが欲しいと頼まれて用意したことがありました。(驚くほど高額でした)

正式なゴルフルールでは、組み合わせ表を委員会が用意して、打順を指定した場合(左のプレーヤーから順番に打つのが多い)は、それに従わなければなりません。

余談ですが、くじ引きはちゃんと元に戻すように徹底しましょう。4本あるはずのくじが、1つだけなくなったり、4本全てがなくなったりする事件が、日本中のコースで報告されています。

悪意なのではなく、ケースに戻すのを忘れてカートバックに入れて持って帰ったり、使い捨てだと勘違いして、ゴミ箱に捨ててしまう初級者ゴルファーがいるようなのです。先輩ゴルファーが、ひと言元に戻すように教えれば、避けられる悲劇です。

スムーズに打順を決めて、無駄なく打ち始めるのが、スマートでカッコイイゴルフです。

ちょうど良い機会なので、くじ引きで決めた打順や、2番ホール以降の前のホールのスコアの善し悪しで決めた打順に縛られないことも大切だというハウツーを紹介します。

ゴルフコースが混雑していたりして、前の組が射程距離内にいるケースを考えます。飛ばし屋がオナーの場合、なかなか打つことができません。短いパー4で、ワンオンする可能性がある場合などは、前の組がグリーンを降りるまで打てないこともあります。

こういうケースで、使用するのが『飛ばない順に打つ』というハウツーです。

飛ばし屋だけが最後まで待てば良いのです。他の安全に打てるゴルファーが先にプレーをすることで、かなりの時間短縮になります。女性ゴルファーとプレーするときには、このハウツーはかなり有効です。

上級者になると、短いホールには大きな罠が待っていることが多いことを知っているので、第1打目でドライバーを使わずに、別のクラブで安全に刻むケースもあります。

この場合でも「刻むから先に打つね」なんてさり気なく言って、スムーズに打ったりすれば、ちょっとカッコイイというわけです。

混んでるから打てない、と開き直るのではなく、少しでもスムーズに時間短縮に努力している姿勢が、最終的には尊敬されるゴルファーとしての雰囲気となって、ティーイングエリアで滲み出るのです。

ティーはゴルファーの檜舞台で、実力が剥き出しになる神聖な場所だと自覚しよう!

ティーイングエリア

「ゴルフはバックティーからじゃなければ本格的とは言えないよ」このセリフは耳にタコができるほど聞きます。部分的には真実ではありますが、適当な戯れ言であることが大部分です。

実力がないのに、バックティーからゴルフをするのはオススメできません。なによりも打球事故を起こす可能性が高くなる危険な行為であるところがダメなのです。

昭和の時代のゴルフコースでは、バックティーでのプレーは原則として特別な競技だけの特権で、解放されてはいませんでした。現在でも許可制になっている所が多いのは、使い方次第では危険性が増すからです。

ティーを選ぶこととができるのはゴルファーの権利です。その権利は、見栄を張るためのものではなく、身の丈に合ったゴルフが一番楽しいことを確認するためのものなのです。

僕は、バックティーに取り憑かれた人を『バックティー症候群』と呼んでいます。病気のようなものだからです。

「そのスコア、フロントティーでしょう?じゃあ、正式とは言えないね。バックティーで良いスコアを出せなければ、ゴルフとは言えないから」こんなセリフは、病気でもなければ、言えないと思うからです。

裏返せば一目瞭然です。自分のスコアが悪いことをバックティーでプレーしているから仕方がない、と諦めることで、自分を甘やかしているのです。

一般のティーで納得のいく素晴らしいスコアが安定して出るようになれば、バックティーでも、そうは変わらないゴルフができるものです。

競技ゴルファーとして、実力がしっかりしているゴルファーであれば、この話をすると賛同してくれますが、中途半端な見栄で競技ゴルフをしているようなゴルファーは『バックティー症候群』にかかりやすいので、理解できないこともあります。

ゴルフは誤魔化せない

僕はゴルフを始めてすぐに「ティーとグリーンは、ゴルファーの檜舞台だ」と教わりました。それは、神聖で大切な場所だという意味だと、すぐに理解しましたが、大人になってから別の意味もあったのだと考えるようになりました。

舞台の上で、脚光を浴びて、自分の役を演じる役者とゴルファーは似ているのです。稽古不足や実力不足は、どうやっても隠せません。

大根役者は、大根が食中毒に強くて食あたりが出ないから、当たらない役者だという語源があるそうですが、大根ゴルファーも当たらないという意味では同じです。そして、自分の都合などに考慮せずに、決まった時間に幕は開き、出番はやってくるのです。

バックティーにティーアップできるから偉いわけではなく、上手いわけでもないのです。そこで、下手くそを晒して、それを反省することもできずに、自分を誤魔化しても、ただ滑稽なだけです。

冷静に周囲を見渡せば変わります。同情されるだけならまだしも、重病になればなるほど、笑い物になるのがゴルフの怖いところなのです。

第一打目を打つティーイングエリアは、ゴルファーを剥き出しにします。油断は大敵ですが、実はスマートな立ち振る舞いを理解して実行するのは、そんなにむずかしいことではありません。簡単だからこそ、それを理解できず、実行もできないからダメなことが目立ってしまうのです。

2023年は始まったばかりです。これを機会に、ティーイングエリアに立っている自分を見直してみましょう。

ゴルフコースに行かなくとも、頭の中で8割ぐらいは解決できてしまうことばかりです。ゴルフは単なるボール打ちではないことを証明できるのもゴルフの面白さなのです。

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篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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