自称・名門コースは名門に非ず。ゴルフコースの格付けはどうなっている?
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第57回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
名門は秘かに静かに存在するから尊いのである!
「そんなこともわからないなら、名門コースでゴルフをするのは一生無理だよ」
名門コースという概念は、トップレベルの資格を有するゴルファーしかプレーできない特別な場所、という感じで理解されているようです。
例えば、元祖と本家の戦いというのは色々な業種で起きますが、ゴルフコースにおける名門コースも似たような定義でカテゴライズされます。単純に、歴史と伝統があるのが、名門コースの条件です。
コースの宣伝で、“○○県が誇る名門コースでの素敵な時間をお楽しみください”なんていう文章や、“クラブハウスを建て替えて、名門コースになりました”というようなコメントは、巷に溢れています。
断言しますが、名門コースは謙虚な気高さで守られるべきもので、名門コースを自称するなんてあり得ないことなのです。名門コースだと自称的な宣伝をすることは、自らが名門コースではないと公言しているのと同じなのです。
「名門コースのコースの周辺には、案内看板がないのを知っているかい?」
これも多くのケースで本当のことだったりします。場所がわからない人は来なくていい、という意地悪説もありますが、基本的には名門コースはメンバーのためのゴルフコースです。
メンバーの同伴や紹介が不可欠だから、案内看板で不特定多数を誘う必要を感じないだけの話だというのが、たぶん正解なのだと思われます。
名門コースの概念
ちなみに日本の場合、開場した順に100番までが名門コースです、と言い放った見識者がいます。ひとつの目安になるかもしれませんが、多くても20番目くらいまでが歴史の長さに応じた名門らしさの要素となり、上手く機能しているように個人的には思います。
僕は名門というのは歴史にプラスして、その場にいる人たちがつくる、特別な時空を有するコースのことで、訪れた部外者が声を潜めて感心し合い、皆が認める――そんな伝説のようなものだと考えています。
歴史が長く、一般的には名門と呼ばれているコースでも、足を踏み入れると名門とは言い難い雰囲気のコースがあります。一方、歴史は浅いのに名門コースの雰囲気を醸し出しているなと、感心するコースもあります。
名門としての時空を守るために厳格なドレスコードがあったり、プレーできるゴルファーを選別したり、時にはメンバーですら、必要に応じて排除する仕組みを厳守しているのが名門なのです。
バブル期までのゴルフコースは名門に憧れ、一流を目指すのが常識だった!
とはいえ、名門コースを説得材料にして、ゴルファーの心得を説く時代はとうの昔に終わってしまいました。
「別に、一生名門コースでプレーできなくともいいですけど、何か?」と、名門コースでプレーすることに憧れどころか、意味を見出せないゴルファーが過半数を超えているような気がします。
日本のゴルフコースはバブル期まで、“名門コース、みんなで目指せば怖くない!”という感じで、猫も杓子も名門コースになろうと夢を見ていました。嘘だと思うかもしれませんが、それは正義だったのです。
歴史の浅いコースはとにかく豪華なクラブハウス、行き届いたサービス、日本庭園のように美しく整備されたコース管理で一流コースを目指しました。
令和の現在では笑い話のような非現実感もありますが、真面目に誠実にゴルフコースは努力を続けていたのです。
プレー代を上げても満員御礼になることで一流を目指す努力は、正しく証明されると信じられていました。
バブル期のピークには、東京の中心から車で1時間以内で行けるゴルフコースでのプレー代の概算(プレー代、食事代などの合計)が、土日祝日なら5万円で辛うじてお釣りが来るレベルまで上がったのです。
多くのゴルファーが社用族で会社の経費でゴルフをしていましたから、自らの財布が痛むわけではありませんでした。だからこそ成立する、夢のような世界だったのです。
あれから30数年が過ぎました。
改めて現代のゴルフコースを観察してみると、猫も杓子も同じ目標に突き進んでいた昔とは違うことに感動します。実に多様な人たちが、それぞれのスタイルでゴルフを楽しんでいるからです。
本当に良いコースについて語れるゴルファーの必要な条件を整えよう!
名門コースは不要だという考え方もありますが、僕は反対です。
回転寿司でお寿司は十分というのもアリですが、お寿司の文化を守る意味では、高級なカウンターだけの老舗お寿司屋も残っていないとダメなのです。
色々なお寿司の楽しみ方の中から、自分に合ったものを選んで楽しめる現在のお寿司業界は、結果オーライででき上がってきたものだと思いますが、素晴らしいバランスだと思うのです。
ゴルフコースも同じです。5万円を握りしめてゴルフをしていた経験がある僕は、同じ条件なのに5千円札1枚に硬貨数枚でゴルフをしています。でも同じ日の同じ時間、同級生の友人は別のコースで数万円を、電子マネーで清算してゴルフをしています。
それぞれが、それぞれに満足して、幸福感を味わっているのが現在なのです。
ゴルフは、ゴルファーの上にゴルファーをつくらず、ゴルファーの下にゴルファーをつくらず。それぞれが、自分の満足を満たせばいいだけなのです。他人のことが気になるのであれば、そちらも体験してみればいいわけで、そういう意味で本当にゴルフは自由なのです。
一番大事なのは、ゴルフコースに恋をすること
「いいコースの条件って、何なんですかね?」
僕は、箇条書きにして18項目のこだわりを持っていますが、それを公表したことはありません。自分だけのこだわりですし、それに影響されて自分が気に入っているコースにゴルファーがたくさん来場して、自分のスタートが思うように取れないという本末転倒なことになるのが怖いからです。
ただ最後の最後に、後出しじゃんけんのように書くのは気が引けるのですが…本当は、ゴルフコースそのものだけを純粋に評価してこその『いいコース』であるべきだと考えています。
施設やサービスももちろん大切ですが、プレーするコースが面白くなければ結局、足は遠退くものなのです。何度プレーしてもまたプレーしたいと思える面白いコースは、AさんとBさんでは全く違うということは、よくあることです。ゴルファーの数だけ、いいコースが存在するのが理想なのです。
僕の場合、ゴルフ歴が長く、若い頃からそれなりのレベルのゴルフをしていたので、ショットという分野では興奮できる限界に達してしまった側面は拒めません。しかし、パッティングとグリーンには、毎回のように興奮させられています。自然と、面白さの比重はグリーンが大きくなるというわけです。
そんなふうに自分を冷静に知ることが、ゴルフコースの面白さを多様に語れる基礎になります。それは、ゴルフを続ける限り、どんどん変化していくものだというところも、ゴルフの面白さなのです。
ゴルフを始めたばかりの頃に大好きだったコースがずーっと好きだというゴルファーもいますし、全くタイプが違うコースに好みが変わるゴルファーもいます。
いずれにしてもいいコースと好きなコースはリンクしやすい、という特徴を考慮すれば、ゴルフコースに恋をすることがたぶん一番大事なことで、不可欠なことなのです。
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篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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