「飛ばないボール」はツアーに必要なのか?

年々、プロゴルファーの平均飛距は伸びている。クラブやボールの用具の進化だけでなく、プレーヤー自身のトレーニング内容や練習環境の変化も大いに影響していると思う。

だが、R&AとUSGAはその飛距離アップを好ましくは思っていないようだ。近年は用具による規制が厳しくなっている。

理由としては、飛距離アップがコース戦略を根本的に変えてしまい、ロングヒッターが有利になりすぎるから、というものらしいが、私はどうも納得がいかない。

ゴルフは、ドラコン以外では必ずしもロングヒッターが勝つわけではない。より短い番手で目標を狙えるようになる、という点では有利だが、それは正当なアドバンテージのはず。身体を鍛え、技術を磨いたものが、他人より飛ばすからズルイ、ではスポーツとは言えないだろう。

今年、ツアーなどの競技用ボールの飛距離制限案が打ち出されたが、非常に安易で、危険な考え方だと感じた。2年前にも、ツアーでのシャフトレングスを46インチまでに制限するローカルルールができたが、これもどうかと思っている。長尺を使いこなしてミート率を高め飛距離アップできる技術をないがしろにしている気がしたからだ。

改めて2020年に2つのルール機関であるR&AとUSGAが発表した「飛距離考察の報告書」にある飛距離制限の2つの理由を確認してみた。

1つは「コースが本来持っている戦略的チャレンジが失われる」から。もう1つは「コースの総ヤーデージが長くなる傾向は、すべてのゴルファーとゴルフ自体に悪影響を及ぼす」とのこと。

ツアープロの技術の進化とクラブの進化

その考え方のベースも説明している。

「我々は、飛距離というものは根本的にはホールの長さと競う手との相対的なもので、ゴルフに必要不可欠な特徴と技術への挑戦は、絶対的な飛距離やコースの長さによるものではなく、ゆえに飛距離やコースが伸びても、ゴルフがより魅力的なゲームになることはない」そうだ。

至極もっともな理由だと思う。だが、対応策としては用具の規制ではなく、ツアー競技に関してはコースセッティングの工夫で十分ではないのか。

2年前に全米オープン勝者のウェブ・シンプソンがこう反論している。「タイトなフェアウェイに長いラフ、小さくてしっかりしたグリーン、より多くのドッグレッグが必要だと思う。もちろんお金や水、土地がなければならないのは承知しているが、8000ヤードのコースが答えではないことはわかる」と。

今年のマスターズでは13番パー5が35ヤード伸びたことが話題となったが、シンプソンは「伸ばす必要はなく、ティから20ヤード前、5フィート左に中くらいの木を用意すればいい。それだけで選手は攻めることができなくなる」と持論を展開していた。

このように、優れたツアープロ自身から意見を募れば、やたらな総ヤーデージ延長ではない、より略的なコースセッティングが可能になると思う。だから、用具による飛距離規制は必要ない、というのが私の考え方だが、ゴルフを面白くしそうな用具の規制案はある。

ドライバーのバルジを8インチよりきつくする、という案だ。飛距離性能は下げなくても、打球が散る要素を増やす。技術レベルの高い者だけが安定した飛ばし屋になれる、という発想だ。バルジをきつくしても、重心設計で昔のパーシモンのごとくオフセンターヒットをフェアウェイに戻すこともできるだろう。

だが、その曲がり幅はロングヒッターになるほど大きくなり、リスクが高まる。新たな技術、楽しみ方が生まれるはずだ。

戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


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