クラブ買い替え時や上達の強い味方「計測器」 でもデータの計測や解析、正しくできてる?
重箱の隅、つつかせていただきます|第35回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.613/106ページより
計測データを採っても正しく解析できるのか?
昨今、様々な計測器がゴルフ業界にも増えつつある。
昔は『ソニー・クリニックシステム』のように仰々しい機器を必要としたため、インドアや実験場でしか計測できなかった打球データなども、『トラックマン』などコンパクトで持ち運び可能な機器が登場したことで、屋外の練習場やコースでも、より実践的なデータを採取できるようになっている。
ただ、ここで問題となってくるのは、それぞれの機器に応じた正しい計測がなされているか、そして採取されたデータをどのように解析するか、ということだ。
よく耳にするのは機器によってヘッドスピードの数値が変わる、というもの。『トラックマン』はシビアに計測するから、他の機器より低い数値になる、らしい。これが事実だとすれば、他の機器では正しいデータは採れていないことになる。
だが、実はデータの取り方に違いがある。『トラックマン』のようなレーダー式測定器は、弾道を計測することでヘッドスピードを逆算で出している。そのため、打球衝撃でわずかに減速した数値をはじき出しているのだ。
逆に、ヘッドスピードを直接カメラ式に計測するものは、インパクト直前のヘッドスピードを計測。だからやや高めに出る、ということがある。いずれにせよ、そういった事実を踏まえてデータの計測や考察をする必要があるのだ。
資格認定制度を利用して、基礎を理解しよう
さて、なぜ今回このテーマを取り上げたかというと、モバイル弾道計測器『ミーボ』シリーズを取り扱うフライトスコープジャパンが、4月に「フライトスコープアカデミー」という資格認定制度の立ち上げを発表したからだ。
すでに他メーカーも同様の資格制度を設けているところもあるが、『ミーボ』のように比較的安価なものは一般アマチュアが購入、使用するはず。それだけにデータの読み違いや誤解は、余計な悩みを増やしかねない。
数値の意味を理解して、正しい判断を下すには、それなりの勉強の機会が必要。その点で「フライトスコープアカデミー」は初級からマスターまでの5段階に資格を分けており、初級はオンライン講座で誰でも受講無料。
『ミーボ』はレーダー式で最新モデルは28項目もデータが採れるので、弾道計測器によるデータの正しい採り方や考え方の基本を理解する入門編としてちょうどいいと思う。上級以上には試験による認定があるというが、このアカデミーに限るということではなく、計測器の解析に関する資格は、いずれはティーチングプロ(PGA)の必須にすべきだと感じている。
今後の課題
これから先、ティーチングもクラブフィッティングも、弾道解析やスイング解析をデジタル数値で捉えなければ、ジュニア相手でも説得できなくなる時代になるだろう。機器の開発も日進月歩かもしれないが、都度アップデートしていく必要がある。
30数年前、ドライバーがパーシモンからメタルに移行する際、上手く使いこなせたプロと、全くダメになってしまったプロがいた。もし、現在の弾道測定器がそこにあったら、その原因を解明してすべてのプロがスムーズに乗り換えられたかもしれない。
現代でも、クラブを替えたことで成績が下降するプロはいるが、もしデータ解析の専門家がタッグを組めば、そういった現象はなくなっていくと思う。
一般アマチュアもクラブ買い替えやレッスンを受けて〝なんとなく良くなりそう〟ではなく、データとしての変化や上達がハッキリわかるようになる。信頼できる指導者・アドバイザーになるには、的確なデータ解析とともに、その数値を確実に変化させられる技能が問われるようになるだろう。
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戸川景(とがわ・ひかる)
1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
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