昭和~令和にわたり販売中の「GⅢ」誕生を支えたのは◯◯メーカー独自のカーボン加工技術
【第37回】商品開発はドラマ!釣具メーカーのカーボン加工技術が生み出した”DAIWA”の伝統をつなぐ超ロングセラー
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話を、メーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はダイワGⅢ(グローブライド)が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.620/70〜71ページより
写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人
36年もの歴史を持つ老舗ブランド
1987年に発売された初代G3「カーボレックスG-3」。その名のとおりカーボンウッドだった。
主に釣具の製造・販売し、スポーツ用品の販売も行うグローブライド株式会社が、現在展開しているゴルフブランドは「ONOFF」、「GⅢ」、「RODDIO」、「FOURTEEN」の4ブランド。
この中でも長い歴史を持っているのが、1987年10月に登場し36年間継続して販売しているのが「GⅢ(ジースリー)」である。
この長い歴史を誇るブランドの成り立ち、コンセプトについて、グローブライド株式会社スポーツ営業本部ゴルフ営業部プロモーション課長・飯嶋淳氏と、同じく企画課クラブ企画係長・戸谷禎志氏に話を聞いた。
グローブライドの創業は1955年。東京都中野区大和町で釣具のリールメーカーとしてスタート、当時の社名は松井製作所だった。
その3年後、1958年には地名である「大和」から名前をとって大和精工株式会社として法人化、1960年には東京都東久留米に拠点を移し、1969年にダイワ精工株式会社に社名を変更。
1971年にゴルフクラブの開発・設計・製造・販売会社のダイワゴルフ株式会社を設立し、2009年、現在のグローブライド株式会社に社名を変更した。
グローブライドはそもそも釣具メーカーであるため、釣り竿に使用するカーボン素材の加工技術はお手の物。ゴルフ部門へ参入したわずか2年後の1973年には、日本初の国産ウッド用カーボンシャフトを開発。
さらに1982年には世界初のカーボンウッド開発競争においてミズノやヤマハと戦い、ミズノに次いでカーボンウッド「カーボレックスシリーズ」を発売している。
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誕生を支えたのは、釣具メーカー独自のカーボン加工技術!
グローブライド株式会社スポーツ営業本部ゴルフ営業部プロモーション課長・飯嶋淳氏(左)と、企画課クラブ企画係長・戸谷禎志氏(右)。
初代「G-3」が登場したのは、その5年後の1987年、商品名は「カーボレックスG-3」、その名のとおりカーボンウッドだった。
「G-3」の命名の由来について、飯島氏は「第三世代、Generation(ジェネレーション)3、次世代という意味を込めて”G-3”です。
プレーヤー、クラブ、ボールが三位一体となり、ベストマッチしたときに飛距離が出るという開発コンセプトで、今までにない次世代モデルとの思いが込められていました」と話してくれた。
その開発コンセプトに合わせ、糸巻ボール用の「G-3PRO-Ⅰ」、ツーピースボール用に「G-3PRO-Ⅱ」、「G-3SL( 軽量モデル)」の3種類を発売した。
糸巻ボール用の「G-3PRO-Ⅰ」はヘッドスピードが速いプレーヤーが糸巻ボールでスピンがかかりすぎる問題を解決するため、フェースインサートにアイオニックポリマーを採用した一方で、2ピースボール用の「G-3PRO-Ⅱ」と、「G-3SL」には2ピースボールに最適スピン量を与える新開発の「メタ・カーボ」フェースインサートを採用。ヘッドにはエアロダイナミックスデザインを施したうえサイドソール部の3種類のボルトを組み合わせることでスイングバランスを3ポイント調整可能にした。
さらに、ソール部には接地面積を減少させるV型ソールを採用するなど、現在でも取り入れられている技術が、36年前にすでに数多く盛り込まれていたというから驚くばかりである。
長い歴史を重ね「G3」から「GⅢ」に
開発コンセプトに合わせ、糸巻ボール用「G-3PRO-Ⅰ」、ツーピースボール用「G-3PRO-Ⅱ」、「G-3SL(軽量モデル)」の3種類を発売。
開発について飯嶋氏は「フェース材料だけでも数十種類評価し、ボールやヘッドスピードに合わせて最適な材料を見つけるのに半年以上かかっています。
またスピンに影響するフェース溝の形状も数多く検討し、さらに加工技術、製造技術を含めてフェース関連だけでも1年近く開発に要しました」という。
またシャフトについて、前職でシャフト開発を担当していた戸谷氏によれば、「当時はカーボンシャフトもスチールより軽ければいいという時代で、今より設計自由度があり、新しい素材・新技術を導入していました。
例えば、カーボン繊維にニッケル被膜をコーティングした”メタ・カーボ”素材を開発して、スチールシャフトのフィーリングの良さとカーボンシャフトの弾きの良さを兼ね備えたシャフトも開発しました」。
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3種類のボルトを組み合わせることでスイングバランスを3ポイント調整できる機能も搭載されていた。
このように地道な研究開発に加えて試打テストを繰り返した結果、「G-3」の商品化には3年以上の時間を要したという。
当時、商品企画はダイワ精工が、開発・設計・製造はダイワゴルフ株式会社が担当し、主に4、5名で推進していたそうで、その関連特許も数多く出願されておりいくつものステップを踏んできたことがうかがえる。
この新しいコンセプトの「G-3」は1本6万3000円で販売を開始。
市場ではすぐに「飛距離と方向性がよい」と高評価を受け、豊富なシャフトバリエーションも後押しし、品不足の状態が続いた。また、高須愛子プロが使用しツアー優勝したことから一気に知名度が上がり、女子プロが10数名使用することでさらに人気に火がついた。
1989年には「G-3アイアン」も発売され、ゴルフ事業部の売上が100億円を突破する推進役となった。以降も新技術を常に取り込み商品数を広げた「G-3」ブランドは、2000年にはゴルフ売り上げの60%を占めるまでに成長した。
伝統と革新を引き継ぎ、昭和、平成、令和、3世代を駆け抜けた!
「G-3」の最新ロゴは3の文字をローマ数字Ⅲに変更した「GⅢ」。社内での愛称は”三本線”だそう。
その後2005年にはブランドをリニューアル。「G-3」の最新ロゴは3の文字をローマ数字Ⅲに変更した「GⅢ」で、社内では愛称として三本線とよばれている。
またG Ⅲの意味も「GRAND GOLF GEAR」の頭文字をとり、充実したゴルフを楽しむ”、”余裕のある大人のためのプレミアムブランド””に変更された。
さらに、2017年には「GⅢ」のロゴの下に「DAIWA」の文字が入った。実は「DAIWA」というブランド名はアジアを中心に海外で絶大な人気を誇っており、その知名度の高い「DAIWA」を付け加えることでブランドのイメージアップを計ると大成功をおさめ、海外販売比率は90%を超えているという。
1987年に登場し、昭和、平成、令和を駆け抜けた「G-3」ブランド。ブランドの伝統と革新を脈々と引き継ぎ「G Ⅲ」となった今もなお進化を続け、輝きを放ち続けている。
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