ヘッドスピード40m/sの人にも試してほしい。増えつつある70グラム台のアイアン用シャフト
鹿又芳典の“推しクラブ” こぼれ話 第13回
アイアン用の軽量スチールというと90グラム台が主流だったが、今どきのシャフトは80グラム台や70グラム台など重量帯を軽いほうに増やしている。いま気になるアイアン用のシャフトと軽量化の背景について、カリスマフィッターの鹿又さんが解説した。
写真/ゴルフサプリ編集部
スチールライクな「neo」、カーボンライクな「ゼロス」
軽量スチールをリードし続けてきた日本シャフトの「N.S.PRO 750GH neo」につて、基本はスチールなのでトルクが少なくて方向が安定しやすいシャフトです。ただし、今の飛び系アイアンのヘッド、つまりスピンが少ないので打ち出し高さを確保しないとパフォーマンスが出せないヘッドに対して、シャフトでプラスαを出そうとしている軽量スチールが「neo」のシリーズ。今までも「N.S.PRO 850GH neo」がありましたが、その「850 neo」でも40グラム台のドライバーシャフトに対して「ちょっと重たいな」と思っている人もいっぱいいて、そういう人にぴったりハマるのが「N.S.PRO 750GH neo」と言えます。
同じ70グラム台の軽量スチールで「ゼロス 7」(日本シャフト)というシリーズもあります。その「ゼロス」はどちらかといえば「カーボンとスチールのいいとこ取りをしましょう」というシャフト。対象ベースとなるカーボンシャフトと同じくらい、しなり量があったり球が上がりやすくなったりしているシャフトが「ゼロス」です。
このように「neo」と「ゼロス」は“ベース”となるコンセプトがちょっと違うということ。同じ70グラム台のスチールシャフトでも「ゼロス」のほうが“カーボンライク”だし、「neo」のほうが“スチールライク”になっています。
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落下角が大きくてグリーンに止まりやすい「トラヴィル」
大ヒット商品の「トラヴィル」(フジクラ)も軽量タイプの「75」がラインナップしました。そもそも「トラヴィル」のコンセプトって、基本的には打ち出し角をある程度高くしつつ、一番は「落下角をつけましょう」なんです。落下角を大きくするには、弾道的に言えばスピン量を増やして最高到達点を上げること。それをカーボンで求めたシャフトです。一方で方向性も出したいので、結果的に言うと先端剛性が高くて、手元のしなり量をある程度出しました。
そういう弾道結果が出たときに「もうちょっと軽いモノが欲しい」というリクエストがスゴく多かったんです。それはどこからのリクエストかというと、女子ツアーだったり一般市場から。女子ツアーで言うと、一番使われているシャフト重量帯は70~80グラム台なんです、スチールもカーボンも。だから70グラム台のシャフトが欲しかった、というところですね。
一般市場で言えば、先ほどお話しした40グラム台のドライバーシャフトに対して、アイアンは70グラム台が中心に。というのも、ドライバーが40グラム台→FWが50グラム台→UTが60グラム台→アイアンが70グラム台だと、キレイな並びになるじゃないですか。そういう意味でも、市場の中心になってくる重量帯なので「トラヴィル」にも70グラム台が追加されたのでしょう。
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ヘッドの大MOI化とシャフトの軽量化はセット
今まで「軽量」というと90グラム台でした。それが「N.S.PRO 850GH neo」などが出て80グラム台に。さらに今、ドライバーのシャフト重量帯が40グラム台になって総重量が280グラム前後と考えたら、アイアンの中心は70グラム台になります。だから、そこの重量帯が厚くなってきてると言えるでしょう。
軽量化の背景をヘッドの側からも考えてみましょう。ドライバーのヘッドサイズが大きくなる=慣性モーメント(MOI)も大きくなる、という流れがあります。それで、今のアイアンも同じ傾向になっていて、ヘッドサイズは変わっていないけれどMOIが大きいヘッドが増えている。するとシャフトが軽量化していったほうが、ヘッドのパフォーマンスが出せるんです。
というのも、ヘッドのMOIが大きくなると、どうしても振りにくくなるもの。ドライバーのMOIが大きくなったときに、シャフトの重量がどんどん軽くなっていきました。MOIが大きくなるのとシャフトが軽くなるのはセットです。そうしたほうがヘッドのパフォーマンスを出しやすいということ。パワーが有り余っていたら別ですけどね。
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鹿又芳典
かのまた・よしのり 1968年生まれ。年間試打数2000本超え。全てのクラブに精通するクラフトマン。豊かな知識と評価の的確さで引っ張りだこ。ゴルフショップマジック代表。
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