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「縦の距離感」をそろえれば、パーオンの回数がぐっと増える

向江寛尚の 「知っ得!! アイアン・スキルアップ学」 Vol.7

2020/09/30 ゴルフサプリ編集部

“読むと得する”ゴルフの知っ得ネタを向江寛尚プロが届けてくれるシリーズ。今回は正確なアイアンショットに欠かせない「距離感の安定」のお話。方向の横ブレを減らすのも大切だが、実は距離の縦ブレを減らすことがもっと大事だという。

向江寛尚
むかえ・ひろたか/1972年11月11日生まれ、東京都出身。法政大ゴルフ部を経て99年プロ転向。多くのトーナメント出場の経験を積み、2005年からレッスン活動を開始。現在はオンワードゴルフアカデミー(東京都世田谷区玉川)を拠点に多くのアマチュアゴルファーをレッスン。クラブの造詣も深い。

距離感を安定させるコツは、「同じスピード感」で振ること

ボールを何発打ってもキャリーの誤差が少ないスイングが究極の理想

アイアンは狙ったターゲットにボールを正確に運ぶことを目的としたクラブです。150ヤード先に直径30ヤードくらいのグリーンがあるとすれば、30ヤードの円の中にボールが止まってくれれば最高です。ということは「方向の横ブレ」を減らすのも、「距離の縦ブレ」を抑えるのも大事です。

ところで方向のブレと距離のブレのどっちがスコアのロスにつながりやすいと思いますか?

正解は距離のブレです。アイアンショットはグリーンの左右に外してしまうよりは、グリーンの前後に外してしまうほうがリスクは大きいのです。ボールが飛びすぎてグリーンオーバーしてしまうと次のアプローチが難しいですし、キャリーが不足してグリーン手前に大ショートしても困りものです。

左右に20〜30ヤード外れても、トップして20〜30ヤードもオーバーしたり、手前をダフって20〜30ヤードもショートしたりするよりはよっぽど安全です。その点、距離の縦ブレが少なくなれば方向の横ブレが少なくなり、スコアがまとまりやすいのです。

アイアンはボールを狙ったターゲットに正確に運ぶためのクラブ。方向性以上に距離感を安定させることが重要だ。

アイアンショットの本来の目的を考えれば、飛距離を伸ばすよりも何回打ってもキャリーの誤差があまりないように距離をそろえることが重要であるのは理解できるでしょう。そうなると「同じスピード感で振る」ということがとても大事なポイント。しかしながらゴルファーのほとんどは、長いクラブになると速く振らないとダメという先入観があるんですよね。

クラブは14本あって、パターを除けば13本ですけど、ドライバーのような長いクラブほど「飛ばさなきゃいけない」と思って力を入れて振ろうとします。その結果、力を向けていく方向を間違えてしまう。つまりクラブの慣性モーメントをほどく方向に力を入れてしまうわけです。

距離を出そうとするための力ではなく、リリースにパワーを出そうとする。8〜9番アイアンくらいならアドレスよりもフェースを立ててインパクトできているのに、長いクラブになると、ほどくのに力を入れてしまうからアドレスよりもインパクトでロフト角が増えてしまうという現象が起こるのです。

そうするとどうなるかというと、同じアイアンでも4〜5番のような長いクラブほどインパクトでフェースが寝やすいため、6番などとキャリーがほとんど変わらなくなってしまいます。

距離を出そうとして振り回すと、縦の距離感がバラつく上にダフリやトップなどのミスが生じやすい。
リリースにパワーを出そうとして、インパクトでロフト角が増えてしまうゴルファーが多い。

アイアンに限らずドライバーからウェッジまで、どのクラブでも「同じスピード感」で振る練習を多く積むことが大事です。ドライバーは思い切り速く、ウェッジはソフトにゆっくり。そんな発想はもう捨てましょう。

長いクラブほど遠心力が大きく働くからスイングのスピードが勝手に速くなるだけで、体の動きのスピード感としてはアイアンやウェッジと変わりはないのです。どんなクラブでも同じスピード感で振れば、全部のクラブでハンドファーストにボールをとらえられるようになり、クラブごとの適正のキャリーが打てるようになります。

特にアイアンショットでは、アドレスよりもロフト角を減らすイメージでスイングしましょう。最初からハンドファーストに構えすぎると、インパクトで手首がほどけやすくなり、ダフリやトップなどのミスが生じやすくなります。両手を体の中心線の近くにセットし、インパクトで体重を左足に乗せて腰を左に回転しながらグリップを左モモの前に移動させましょう。

どのショットも飛びすぎたり、飛ばなさすぎたりしないように同じスピード感で振ることを考えよう。
スピードをそろえれば自然とハンドファーストにインパクトできるようになり、ロフト角どおりのキャリーが打てる。

練習場で自分の本当のキャリーを把握しておこう

アイアンは飛ばすためのクラブではなくて、自分の決めた距離を打つことが大事です。自分の決めた距離を打てるようになるには、自分のキャリーを正確に把握しておかないといけません。一般の男性ゴルファーなら、「7番アイアンで150ヤード飛ぶ」と口にする人が多くいますが、実際のキャリーは130ヤード程度という人がほとんどです。

自分の飛距離って、グリーンに乗ってからのランを含めて最後にボールが止まった場所までの距離を自分の距離と思い込んでいませんか? グリーンのすぐ手前に池があって、ピンまでは150ヤード。そんな場面で、「150ヤードだから7番アイアンでピッタリだ」と思って打ったショットがキャリーでグリーンに届かず、手前のバンカーに打ち込んでしまったということがよくありませんか?

自分の距離を過信してはいけません。練習場でもボールが着弾した場所までの距離を確認しておきましょう。そして130ヤード先に仮想のグリーンとなる円があったら、10回打っても同じ円の中に落とせるようになりましょう。同じスピード感で振るには10割のマックススイングではなく、8割くらいに力感をセーブしたスイングがベストです。

飛距離はゴルファー個々で異なりますから、自分のキャリーの数値を正確に知ることです。自分のキャリーをコースプレーに当てはめて考えれば、手前のグリーンエッジまでの距離を見て、グリーンに届かせるためのクラブ選択が的確になります。

自分のキャリーを正確に把握しておけば、手前のグリーンエッジまで確実に届くクラブを判断でき、クラブ選択の間違いがなくなる。

アイアンはグリーンやピンを狙うクラブですから、飛ぶのと飛ばないのとではどっちがスコアを作りやすいかといったら、飛ばないほうが断然有利です。飛びすぎてグリーンの奥にいってしまうと次が下り傾斜となり、難しいアプローチやパットが要求されるパターンがすごく多くなります。下手すると大叩きに直結しかねない大ピンチです。

その点、ピンの手前側ならアプローチもパットも打ちやすくて、スコアを作りやすい。だからアイアンには飛距離を求めないことです。「飛ばないのは逆にいいことなんだ」と、アイアンの考え方を改めましょう。

ボールがつかまりすぎてキャリーが多く出たときは、グリーンの左奥に飛んでしまうことが多くなります。少しコスリ球になったとか当たりが薄かったときは、グリーンの右手前にショートしやすくなるのです。同じミスでも左奥よりは、右手前に行くほうがまだマシです。

あまりにもキャリーが出ないという人は、ダウンスイングで体が早く開いていることが考えられます。でも、体が開かないように打とうとしても、ほとんど効き目はないでしょう。

そんな人たちはバックスイングが手上げになっているため、捻転が不足しています。左ヒジを無理に伸ばしたままにしなくてもいいですから、両手が右腰の高さくらいに上がるまではアドレス時の両肩と両腕の三角形を崩さないでクラブを上げていきましょう。

バックスイングの捻転が深くなればダウンスイングで体の開きを抑えられて、クラブがインサイドから適正角度で振り下ろせます。結果としてダウンブロー、かつハンドファーストにインパクトできるようになるのです。

バックスイングで手先でクラブを上げると捻転が不足し、ダウンスイングで体が早く開きやすい。
テークバックの始動はアドレスの両肩と両腕の三角形をキープ。上体が十分に回転すれば左ヒジが少し曲がってもOK。
バックスイングで深い捻転が作られた結果、ダウンスイングで体が開かず、ハンドファーストにインパクトできる。


取材・文/三代 崇
写真/圓岡紀夫
協力/高麗川カントリークラブ


向江寛尚の「知っ得!! アイアン・スキルアップ学」

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【シリーズ一覧】
●Vol.1:バウンスを使って打てばアプローチもバンカーもやさしい!
●Vol.2:バウンスを滑らせれば、アプローチはもっと簡単になる
●Vol.3:「バウンス」を使いこなせ バウンスの役割と活かし方
●Vol.4:目指すは90切り! 気持ちよくグリーンに乗せよう!!
●Vol.5:アイアンショットが劇的にうまくなる4ステップドリルを公開!!
●Vol.6:曲げないことよりも、狙った方向に打ち出せるようになろう!
●Vol.7:距離感を安定させるコツは、「同じスピード感」で振ること
●Vol.8:方向性がもっとよくなる「スクエア感覚」を身につけよう
●Vol.9:「飛ばない」「上がらない」の悩みは「飛び系アイアン」で解消