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「飛ばない」「上がらない」の悩みは「飛び系アイアン」で解消

向江寛尚の 「知っ得!! アイアン・スキルアップ学」 Vol.9

2020/10/14 ゴルフサプリ編集部

“読むと得する”ゴルフの知っ得ネタを向江寛尚プロが届けてくれるシリーズ。アイアンはボールが飛びすぎるのはよくないが、ボールが上がらないし距離が全然出ないというのも困りものだ。そこでシリーズの最終回は、ギアで悩みを簡単に解決できるという、とっておきのネタを公開する。

向江寛尚
むかえ・ひろたか/1972年11月11日生まれ、東京都出身。法政大ゴルフ部を経て99年プロ転向。多くのトーナメント出場の経験を積み、2005年からレッスン活動を開始。現在はオンワードゴルフアカデミー(東京都世田谷区玉川)を拠点に多くのアマチュアゴルファーをレッスン。クラブの造詣も深い。

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球が上がりやすい「飛び系アイアン」で出球の高さをそろえるコツをつかもう

ロフト角が少なくてソールが厚めの「飛び系アイアン」は使ってみる価値アリ

昨年のことですが、某ゴルフ雑誌の企画で、「飛ぶ」と評判のアイアンの全モデルの試打をさせて頂いた機会がありました。

「飛び系のアイアン」、「プロも使う飛ぶアイアン」の2つのカテゴリーに分類して実際に打ち比べてみたのですが、「飛び系のアイアン」は鋭角に打ち込まなくてもボールが上がりやすくて飛ぶという印象でした。「プロも使う飛ぶアイアン」は、しっかり振るほど飛んで球筋が安定しやすいというのが率直な感想だったと記憶しています。

どのメーカーも「飛び系のアイアン」は7番アイアンのロフト角が24〜29度と少なめなのに対し、「プロも使う飛ぶアイアン」は30〜33度と多めでした。えっ、ボールが上がりやすいアイアンならロフト角は少なめじゃなくて、多めがいいんじゃないの? そんな疑問が沸いてきますよね。プロのようにヘッドスピードが速い人ならロフト角は少なめのほうがいいはず、と思っている人も多いことでしょう。

そこで私がクラブアドバイザーをつとめさせて頂いているグローブライド(株)のオノフアイアンをモデルとして説明しましょう。現在のラインナップとしては、『オノフ フォージドアイアン KURO』(以下、オノフ黒)、『オノフ アイアン AKA』(以下、オノフ赤)があり、今年9月にリリースされた『オノフ アイアン AKA FF』(以下、オノフ赤FF)が新たに加わりました。

オノフ黒は7番アイアンのロフト角が32度とノーマル仕様で、中・上級者向けのスペックとなっています。私もこのオノフ黒を好んで使っています。

オノフ赤は7番アイアンのロフト角が28度とオノフ黒の7番アイアンよりも少なくて、かなりのストロングロフトになっています。

そしてオノフ赤FFは7番アイアンのロフトは25度と、オノフ赤以上のストロングロフトです。オノフ赤とオノフ赤FFは「飛び系アイアン」、オノフ黒は「プロも使う飛ぶアイアン」というわけです。

『オノフ アイアン 黒』の7番アイアンのロフト角は32度のノーマル仕様となっている。
『オノフ アイアン 赤』の7番アイアンのロフト角は28度と、かなりのストロングロフトだ。
今年9月リリースの『オノフ アイアン 赤FF』。7番アイアンのロフトは25度まで立っている。

次にクラブヘッドの構造を見てみましょう。3つのタイプのヘッドの分解写真を見るとまったく異なることがわかります。

オノフ黒は中空構造のキャビティバックとはいえ、他の2タイプほど低重心ではなく、昔のマッスルバックの名残が少し見られる設計といえます。それと比べればオノフ赤はソールがかなり幅広いポケットキャビティ構造になっているのが一目瞭然です。ポケットキャビティとはバックフェースのソール寄りの部分に肉厚をもたせて、そのフェース際をくり抜いてポケット状にしたものです。

オノフ赤FFはオノフ赤のポケットキャビティ構造をさらに改良を加えて、低重心化とストロングロフト化を進めた最新のアイアンです。ヘッドスピードがあまり速くなくて、飛距離がもっと欲しいという人にはオノフ赤やオノフ赤FFがオススメです。ヘッドスピードは速いほうだけど、マッスルバックやハーフキャビティよりももう少し飛ばしたい人にはオノフ黒がピッタリでしょう。

『オノフ アイアン 黒』のクラブヘッド。中空構造だが、他の2タイプと比較するとそれほど低重心ではないことがわかる。上級者好みの造りといえる。
『オノフ アイアン 赤』はポケットキャビティ設計。ロフト角を少なめにし、ソールを幅広くしてボールが上がりやすく、飛距離も十分に出るという。
『オノフ アイアン 赤FF』は従来の『オノフ アイアン 赤』の構造に改良を加えた新時代のアイアン。ヘッドスピードが速くない人にも驚きの飛びが実現する。

「飛び系アイアン」なら、すくい打ちの欠点を補ってくれる

どうしてあまり飛ばない人がロフト角の少ない「飛び系アイアン」が向いているかというと、すくい打ちのスイングになってもクラブの特性がカバーしてくれるからです。

ロフト角28度や25度のアイアンを持って、通常に構えたとしますね。でも、すくい打ちになりやすい人はインパクトでロフト角が30〜35度近くまで増えてしまいます。本当ならすくい打ちはスイングの欠点といえますが、「飛び系アイアン」を使えば多少すくい打ちになっても、インパクトでちょうど適正のロフト角になりやすい。スイングをとくに変えなくても、クラブが飛距離アップを実現してくれるというわけです。

昨年の試打の際でも、私は「飛び系のアイアン」で打つときはターフをとらないで、ややアッパーに打ってみましたが、ビックリするほどの高い弾道で飛んでいきました。飛距離だって、プロも使うアイアンよりも出ていたほどです。上級者でもボールを払い打つイメージでスイングする人でしたら、ストロングロフトのアイアンを試してみる価値アリだと思います。

それに対してプロや上級者は、ボールをダウンブローにかつハンドファーストにとらえる技術が備わっています。構えたときのロフト角が32度でも、インパクトで25度近い適正ロフトまでフェースを立てて打てるから、アベレージゴルファー向けのアイアンよりもロフトが多めとなっているのです。

要は、スイングがしっかりしている人が、しっかりと打ちたいクラブということに尽きます。アベレージゴルファーでも技術のレベルアップを本気で目指したいなら、ちょっと難しくても上級者向けのアイアンを使うのがいいでしょう。

すくい打ちになりやすい人は、構えたときよりもインパクトでロフト角が減ってしまう。ストロングロフトの飛び系アイアンは、こうした欠点をカバーしてくれる。
スイングがしっかりしている人はダウンブロー、かつハンドファーストにインパクトできる。そのため上級者向けのアイアンはロフト角が多めとなっている。
今のスイングのままでもっと飛ばせるようになりたいのか、しっかりしたスイングを身につけてレベルアップをはかりたいかで、使うアイアンを選ぶといい。

出球の高さのイメージが距離感のコントロールにつながる

アイアンでボールが上がりにくい、距離が出ないと悩んでいたゴルファーが「飛び系アイアン」を使うことで、自分の欠点が解消されるのはとてもいいことだと思います。でも前にも申し上げましたように、アイアンは飛ばすことを目的としたクラブではありません。

今まで7番アイアンで130ヤードしか飛ばなかった人が、「飛び系アイアン」を使ったら145〜150ヤードくらいまで飛距離が伸びたというのはよくあることですが、もっと飛ばそうとして思い切り振り回してばかりいてはいけません。

ボールを拾い上げるようなスイングでもボールがしっかりつかまりやすいからといって、意図的にアッパーに打とうとするのも逆効果です。極端なすくい打ちとなり、ダフリやトップなどのミスが多発して折角のクラブの特性が活かせないからです。

アッパーに打とうとして、極端なすくい打ちになるのは避けよう。ダフリやトップが生じやすく、距離感の安定につながらない。

大事なのはどんなときも同じスピードや力感で振るということです。7番アイアンで10球打ったら10球とも135〜140ヤード飛ぶという具合に、自分の平均値を安定させましょう。自分の飛距離を他人の飛距離と重ね合わせて考えてはいけません。他人が7番アイアンで150ヤード飛ぶからといって、自分も他人の飛距離に追いつけ追い越そうなんて考えないことです。キッチリ当たれば150ヤード飛ぶけど、芯を外したら100ヤードくらいしかいかないようではスコアが作れないのです。

一度練習場で7番アイアンだけで100球打ってみてください。最初は50球でも構いません。100球打つならせめて90球、50球なら45球は縦の距離の誤差の幅を10ヤード以内に抑えられるようになりたいものです。10〜20ヤードも距離の誤差が出ると、クラブの番手でいえば1〜2番手も違ってきます。8割くらいの力感で、同じスイングを繰り返して打とうと思えば、大振りをしなくなるはずです。不思議なもので縦の距離感がそろってくると、方向も自然と安定してくるものです。

「飛び系アイアン」を使って、ボールが適正の高さまで上がってくれるようになると、出球の高さが距離感のイメージにつながってくることにも気づくでしょう。「アプローチはボールの高さで距離感をコントロールする」とプロたちはよく口にしますが、それはアイアンショットも一緒です。

ボールの出球の高さと、弾道の最高地点の高さのイメージは、クラブの番手ごとに違ってきます。その辺はゴルファーのレベルやヘッドスピードの速さにもよりますが、7番アイアンのショットは出球の高さがこのくらい、最高地点の高さはこのくらいという具合に弾道をイメージして打つと、縦の距離感がそろいやすいのです。8番アイアンは7番アイアンよりも出球が少し高くなり、6番アイアンなら出球がやや低くなるといった感覚です。

今ではほとんど使われなくなった3〜4番のようなロングアイアンでは、ヘッドスピードがあまり速くない人が使うと出球が低くなりすぎる傾向がありました。キャリーが5〜6番アイアンよりも落ちるけれど、地面に着弾してからのランが多く出るという現象が起こりやすかったのですが、「飛び系アイアン」のように高さを出しやすいクラブなら、出球の高さをイメージして打ちやすいという長所につながります。

今の一般アマチュア向けのアイアンセットは6〜7番アイアン以下というセッティングが増えましたが、アイアンの全番手で出球の高さを自分なりに把握しておくのも大事です。それがどの番手でも、同じスピード感覚や力感でスイングするということです。

アプローチは出球の高さで距離感をコントロールするが、その感覚はアイアンショットも同じだ。
アイアンはどの番手でも同じスピードと力感で振ることがもっとも重要。結果的に番手ごとの出球の高さを把握しやすくなり、縦の距離感がそろってくる。


取材・文/三代 崇
写真/圓岡紀夫
協力/高麗川カントリークラブ
   グローブライド(株)


向江寛尚の「知っ得!! アイアン・スキルアップ学」

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【シリーズ一覧】
●Vol.1:バウンスを使って打てばアプローチもバンカーもやさしい!
●Vol.2:バウンスを滑らせれば、アプローチはもっと簡単になる
●Vol.3:「バウンス」を使いこなせ バウンスの役割と活かし方
●Vol.4:目指すは90切り! 気持ちよくグリーンに乗せよう!!
●Vol.5:アイアンショットが劇的にうまくなる4ステップドリルを公開!!
●Vol.6:曲げないことよりも、狙った方向に打ち出せるようになろう!
●Vol.7:距離感を安定させるコツは、「同じスピード感」で振ること
●Vol.8:方向性がもっとよくなる「スクエア感覚」を身につけよう
●Vol.9:「飛ばない」「上がらない」の悩みは「飛び系アイアン」で解消