ゴルフルールを深読み|打ち直しは“救済エリア”から打てるようになったが…
80台で回るためにも覚えておきたい!深読みルール
2019年より改正されたゴルフ新ルールでは、打ち直しは、1クラブレングスの“救済エリア”から打てるようになった。旧ルールでの打ち直しの考え方は元の位置に戻すのが正解、とされていた。そこに1クラブレングスの許容範囲を設けたのは〝元の位置に戻す問題点〟が見えてきたからだろう。
今回はその点を踏まえ、ルールの深読みをする。
打ち直しは“救済エリア”から打てるようになったが……
【規則14.6より】
・ティーイングエリアからの打ち直しは、ティーイングエリア内すべてOK。
・グリーン上での打ち直しは、元の位置にプレースしなければならない。
・他のエリアでは、元の位置を基点とした“救済エリア”にドロップ。
「元の位置」に戻さなくていいメリット
3月開催のアーノルド・パーマー招待でのこと。フィル・ミケルソンがティショットを曲げ、右のOB際のネットスレスレに止まった。ミケルソンは9番アイアンのヘッドをひっくり返し、普段とは異なる右打ちを試みたが、打球はネットに当たり、OBとなってしまった。
旧規則なら、OBの打ち直しは元の位置になるべく近い所から、つまりネット際から打たざるを得ない。
だが、新規則では「直前のストロークが行われた箇所を基点とした、1クラブレングスの〝救済エリア〟の中にドロップ」と変更になった。
ミケルソンはホールに近づかない、ネットから1クラブレングス離れた場所にドロップ。通常の左打ちでグリーンをとらえ、ミスを最小に抑えたダブルボギーでピンチを切り抜けたのだ。
この、ティーイングエリアとグリーン以外、つまりジェネラルエリア、ペナルティーエリア、バンカーでのOBの打ち直しや暫定球をドロップするのが〝元の位置のなるべく近く〟から〝1クラブレングス以内の救済エリア(ホールに近づかない)〟に変更されたことは、実は非常に重要な改変ポイントと言える。
打ち直しの考え方はリセット、つまり「プレー続行できない状態(OB、池ポチャなど)を、1罰打でなかったことにする」わけだから、元の位置に戻すのが正解、とされていた。そこに1クラブレングスの許容範囲を設けたのは〝元の位置に戻す問題点〟が見えてきたからだろう。
〝救済エリア〟の許容範囲が生むスムーズな進行
ティーイングエリアとは異なり、セカンド以降ではショットの後にディボット跡ができるもの。元の位置のなるべく近くにドロップとなれば、跳ねた球がディボット跡にはまる可能性も高い。
ディボット跡は元の球の位置よりホールに近いから、再ドロップ? いや、ダフリ気味ならそうとは限らない。
ディボット跡から離れた位置にドロップ……それでは、元の位置からも離れてしまうはず。どの程度離れた場所でいいのか、ルールに忠実でありたい人ほど、このジレンマに陥っていたと思われる。
ここで考えたいのが、ドロップの場所が元の位置から多少ズレることで、なにがしかの〝不当な利益〟を得られるかどうか、ということ。
1クラブレングスの幅で左右、後方にドロップすることで、1罰打以上の利益が得られるだろうか。むしろ、ディボット跡に落としたら、1罰打払ったのに、適切な救済を受けられたとは言えなくなるのでは。
1罰打といえば、ペナルティーエリアからの救済、アンプレヤブルもある。それらと同等の救済を得られるほうが正解のはず。R&Aも熟考の末、ドロップする救済エリアとして1クラブレングスの許容範囲を設けたのだろう。
ミケルソンの例に従えば、1クラブ以内ならラフからフェアウェイに出すこともできる。これは〝不当な利益〟ではない。気をつけてほしいのは、ペナルティーエリアからジェネラルエリアなど、異なるエリアには出せないこと。1クラブ以内でもダメだ。
[関連]2019年 ゴルフ新ルールへ大改正!OB・ドロップ・パットなど変更点まとめ
イラスト/庄司 猛
GOLF TODAY本誌 No.570 111ページより
【シリーズ一覧】
●ドロップのボールを落とす位置が膝の高さになった理由・目的は?
●旗竿(ピン)を立てたままパッティングできるようになったが…
●バンカーでも小石や枯れ葉を取り除けるようになったが…
●スタンス確認、キャディもクラブも使えなくなったが…
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●打ち直しは“救済エリア”から打てるようになったが…
●打球が自分に当たっても無罰で打てるようになったが…