ゴルフルールを深読み|打球が自分に当たっても無罰で打てるようになったが…
80台で回るためにも覚えておきたい!深読みルール
2019年より改正されたゴルフ新ルールでは、打球が自分に当たっても無罰で打てるようになった。そもそも罰打=ペナルティーとは、プレーヤー自身のミスにより、そのままプレー続行ができない状況を救済するために加算されるもの。だが、自打球は〝ミス〟というより〝事故〟だろう。
今回はその点を踏まえ、ルールの深読みをする。
打球が自分に当たっても無罰で打てるようになったが……
【規則11.1より】
・動いているプレーヤーの球が“偶然に”人や外的影響に当たっても無罰。
・グリーンでプレーされた球が別のグリーン上の球に当たった場合のみ2罰打。
・当たった球は、止まった位置からあるがままにプレー。
偶発事故の対処として罰打は必要?
林の中で、打球が木に跳ね返ってプレーヤー自身の体に当たってしまう、という事故は結構ある。
旧規則では、動いている球の動きを変えてしまったということで、1罰打となっていたが、新規則では無罰に変更された。
そもそも罰打=ペナルティーとは、プレーヤー自身のミスにより、そのままプレー続行ができない状況を救済するために加算されるもの。だが、自打球は〝ミス〟というより〝事故〟だろう。
打球が木に当たってしまったのは、想定内だったとしてもミスショットの範疇だが、これだけならもちろんペナルティーの対象にはならない。問題は〝偶然に〟打球が自分の体に当たったことだ。これは〝事故〟と呼べる。
このような〝事故〟の対処を考える場合、まず打球結果から見ると、本来止まる位置がプレーヤーによって変えられた、という捉え方になる。だから、何らかのペナルティーが必要になる、といえる。
だが、球の止まる位置が変わったことでどれだけの〝利益〟が得られるのだろうか。逆に〝不利益〟を被る確率のほうが高いかもしれない。
また、体に当たった打球を意図的にコントロールできるわけもないので、球の動きは「変えた」のではなく「変わった」と考えるのが正しい。となると、やはりペナルティー加算は不当と思われる。新規則での変更は妥当だろう。
「2度打ち」も偶発事故と捉えて考える
動いている球の動きを故意に変える行為は、旧規則と変わらず2罰打だが、偶発事故的なものは、新規則ではほとんど無罰となった。たとえば「2度打ち」もその一つ。
アプローチなどで起こりがちだが、今でも語り草になっているのが、1985年の全米オープン最終日。陳志忠がこの「2度打ち」で優勝争いから脱落したのだ。
わざと「2度打ち」するテクニックを持つプロもいるが、試合中に使う者はいない。コース内では〝偶然に〟「2度打ち」は発生する。
この打球結果も、プレーヤーには〝不利益〟の可能性が高い。無罰に変更されたのは当然だろう。
ちなみに、故意に動いている球の動きを変えた場合、対処がややこしい。2罰打を加算したうえで「変えなければ止まったと推定される箇所を基点とする救済エリアにドロップ」しなければならない。推定……できるだろうか?
グリーン上のパッティングの場合は、ストロークを取り消してやり直せばいいから、処置としては簡単。もちろん2罰打だ。
とにかく、動いている球を〝故意に〟止めることは罰打以前の問題。2018年春先に起きたフィル・ミケルソンの事件のように、ゲームの根本に関わることなので、競技失格になってもおかしくないのだ。
さて、自打球や「2度打ち」の結果、打球が打ちづらい場所に止まったらどうするか。アンプレヤブルで前打地点の戻るのがオススメだ。やり直しは成功する確率が高まる。
旧規則では理不尽とも思えた1罰打を有効活用できると考えれば、結構使いやすいのではないだろうか。
[関連]2019年 ゴルフ新ルールへ大改正!OB・ドロップ・パットなど変更点まとめ
イラスト/庄司 猛
GOLF TODAY本誌 No.571 111ページより
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