ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座Vol.2【スピン】
知らないと、クラブ選びで失敗しちゃうかも!
「慣性モーメント」、「重心アングル」などなど、いろんなギア用語を目にするけれど、そんなこと知らなくたってゴルフ場では困らない!どうせ新製品を売るためのセールストークでしょ、と思っていませんか?
そんなことはありません、ゴルフクラブの基礎知識を持っていれば、クラブ選びの失敗がなくなるだけじゃなく、飛びも方向性もスコアだってよくなっちゃうんです。そんな、クラブ選びにもスコアアップにも役に立つ、超基本ギア用語をお届けします。
ゴルフクラブ基礎知識講座【スピン】
Q.バックスピンやサイドスピンはなぜかかる?
A.ヘッドの運動方向に対して〇ェ〇スの向きが直角になっていないから
超基本ギア用語講座の2回目です。ギア用語講座というタイトルですが、打球の行方や弾道、飛びを左右する重要なポイントなので、今回はスピンがなぜかかるのか? そのメカニズムを紹介します。
ヘッドの運動は、ロフトと垂直な向きと平行な向きに分解できる
なぜスピンがかかるのか? をギュギュッと圧縮していうと、その答えは「ヘッドの運動方向に対してフェースの向きが直角になっていないから」となります。これ以外にも、スイートスポットを外してボールを打った時にもスピンが掛かりますが、今回は超基本のメカニズムとして、スイートスポットで打った時にスピンがどのようにしてかかるのかを説明します。
ロフトがついているぶん、ヘッドの運動方向に対してフェースの向きは垂直になっていない。
パターにも3度前後のロフトがありますから、ドライバーからパターまでインパクトでフェースの向きはヘッドの運動方向(V)に対して直角にはなっていません。(図1)
このためにバックスピンが掛かります。ロフトがあるからバックスピンがかかるというのは、体験的にわかると思いますが“なぜ”と問われたら、チコちゃんに叱られそうですよね。
そこで(図1)をフェースが地面と水平となるように左に回転させると(図2)になります。
ヘッドの運動(V)は、フェースに垂直な方向の(A)と水平な方向の(B)に分けられる。
このように見ると、ヘッドはフェースと垂直な方向に動きながら、同時に水平な方向にも動いていると見ることができます。
実際のインパクトでは、ボールがつぶれボールがフェースに押し付けられた状態で、ヘッドと一緒に少し移動してから打ち出されます。この時にフェースと水平方向に下向きの速度Bでバックスピンがかかるのです。
フェースにくっついて移動している間に、フェースに垂直な方向(A)と、水平な方向(B)の両方の向きの運動が与えられると考えてください。
フェースと水平方向の運動(速度)B がバックスピンを生む。
インパクト後ボールがフェースを離れるまでの間に、フェースに垂直な方向(A)と、水平な方向(B)の両方の向きの運動が与えられた結果、ボールはフェースとほぼ垂直な方向に打ち出され、同時にバックスピンが掛かります。
ほぼというのは、(B)の作用でスピンがかかると同時に、ボールは少しフェースの下方向に引っ張られるからです。(図4)
Bがバックスピンを生むシミュレーション
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ボールを紙の上に置き、紙を右方向に引っ張るとボールは反時計回転をしながら右方向へ移動する。
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最終的にボールにはバックスピンが掛かり、図4で右方向に引っ張られる分だけ、フェースに垂直な方向より少し下に打ち出される。
ヘッドスピードやヘッドの入射角でBの長さが変化するから、スピン量も変化する
スイートスポットで打っている時は、ヘッドの運動(V)とフェース向きのズレがスピンを発生さているわけですが。これがわかると、ヘッドスピードが速い人はスピンが多くなって吹き上がるという現象も説明できます。
ヘッドの運動を示す(V)は速度を示しているので、ヘッドスピードが速い人は(V)が長くなります。すると、同時に(A)と(B)も長くなるので、バックスピンをかける力が大きくなってスピンが増えるというわけです。
また、ダウンブローだとスピンが増え、アッパーブローだとスピンが減るのも、(図2)で説明できます。
ダウンブローだと(図2)よりも(V)の右方向の傾きが増します。すると(B)の長さが長くなるので、バックスピンが増え、反対にアッパーブローだと、(V)が垂直に近くなり(B)が短くなるので、バックスピンが減るわけです。
インパクトでフェースが右を向いていればスライス、左を向いていればフック
ヘッドのイラストをドライバーに替え、視点の位置を変えると(図6)になります。ヘッドの運動方向に対してフェースが右を向いていると(B)はヒール方向を向き、ボールにはスライス回転が掛かります。反対に、ヘッドの運動方向に対してフェースが左を向いていれば、ドロー回転がかかるというわけです。
またよく「ヘッドスピードが遅い人は曲がらない」と言われますが、この場合も(V)の長さが短くなるから(B)も短くなってサイドスピンが少なくて済むからと言えるわけです。ヘッドスピードとバックスピンの関係と同じで、ヘッドスピードによって(V)の長さが変わるのでサイドスピン=球の曲がり幅が変わるのです。
また、「スライスするのはアウトサイドイン軌道で振っているからだ」と言われていますが、アウトサイドイン軌道で振っていたとしても、スイング方向に対してフェースがスクエアになっていれば、アウトサイドイン軌道の方向に“ストレートボール”が出ますので左に真っすぐ飛んで行きます。だから、実際のプレーでは、スイング軌道よりフェースの向きの方が大切だと言えます。
ヘッドの軌道より、フェース向きの方がはるかに大切!
多くのアマチュアゴルファーのインパクトを計測器のデータで見てきましたが、ごく稀に例外の人もいるもののスイング軌道がアウトサイドインでも、インサイドアウトでも、ほとんどの人はストレート軌道に対して5度以内で振っています。
すると、インパクトでのフェースの向きも目標に対してオープン5度からクローズ5度の範囲で収まっていれば一番右に飛ぶのはインサイドアウト5度でフェース向きがオープン5度(軌道に対してはスクエア)の時で、一番左に飛ぶのはアウトサイドイン5度でクローズ5度(軌道に対してはスクエア)の時になります。
打ち出し方向が目標に対して5度ズレた時でもサイドスピンが掛からなければ230ヤード先での目標に対するズレは約20ヤードです。
つまり、フェアウェイセンターを狙ってティショット打っていれば、インパクトのフェース向きが目標方向に対してオープン5度から、クローズ5度までの間で打つことができれば、ボールはフェアウェイセンターから左右20ヤードの範囲に収まるというわけです。
平均的なコースのフェアウェイの幅は40ヤード程度ですから、スイング軌道を考えるよりも、インパクトのフェース向きをオープン5度からクローズ5度くらいの間で打てれば、概ねフェアウェイに打てると考えていいでしょう。
つまり、クラブを選ぶ時 “曲がらないクラブ”を選びたいのなら、目標に対してスクエアなインパクトがしやすいものを選べばいいということです。
そのためには、自分に合った重量や、重心アングル、慣性モーメントというキーワードが出てくるわけですが、これらは、別の機会に説明させていただきます。
ゴルフクラブ基礎知識講座 Vol.2 まとめ
・ロフトとヘッドの運動方向の差異がバックスピンを生む
・サイドスピンもバックスピンも同じメカニズム
文
大塚賢二(ゴルフトゥデイ編集部)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。現在はギア担当としてゴルフトゥデイ編集部に籍を置く傍ら、有名シャフトメーカーのフィッターとして、シャフトフィッティングも行っている。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。
【関連】ゴルフクラブの選び方|初心者向け基礎知識をクラブ種類別に解説
【シリーズ一覧】
●Vol.1:超基本ギア用語講座【ロフト】
●Vol.2:超基本ギア用語講座【スピン】
●Vol.3:超基本ギア用語講座【バルジとロールとギア効果】
●Vol.4:超基本ギア用語講座【慣性モーメント】
●Vol.5:超基本ギア用語講座【重心とスイートスポット】
●Vol.6:超基本ギア用語講座【フレックス編】
●Vol.7:超基本ギア用語講座【バランス(スイングウェイト)編】
●Vol.8:超基本ギア用語講座【高反発と飛びの3要素編】
●Vol.9:超基本ギア用語講座【ゴルフクラブに使われる素材】