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面白くないけれど、やらなきゃいけない1メートルのパット練習の極意

伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」vol.17

2023/11/03 ゴルフサプリ編集部

ゴルフボール

伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」。
「プロより強いアマチュア」と呼ばれた中部銀次郎氏が遺した言葉は、未だに多くのゴルファーのバイブルとなっている。その言葉一つひとつを、皆さんにお届けしていく。

GOLF TODAY本誌 No.617/68〜69ページより
本誌イラスト/北村公司

「パットは推理小説 作家になったつもりで」

中部銀次郎さんがいつもの小料理屋で日本酒を嗜んでいる。L型のカウンターの一番隅に座って、同じくカウンターに座る人々の話を楽しそうに聞いている。中部さんの顔が見たい人も多く、ゴルフ好きが集まっている。ゴルフとはいかなるものかと言った高尚な話が成されればよいが、得てして先日やったゴルフの四方山話だ。それも、この日はパットが苦手な人の愚痴のような与太話

「1メートルがまったく入らない。この距離になると、もうダメだと目を瞑りたくなる。入れたいよりも外したくない気持ちが勝ってしまい、結局外してしまう。押し出してばかりでカップの右を通過する。それを嫌がれば引っ掛けて左に外してしまう」

隣の友人が訊く。「それで何パットしたのよ?」御本人はうなだれながら言う。「最初のハーフが21パット、後のハーフが23パット。もうスリーパットばっかりだよ」

その人のやるせない、それでいて憤った顔を中部さんは見て、笑いを押し殺す。そうした悩みがくだらないなどとは微塵も思ってはいない。とても可愛いな、ゴルフが好きなんだなと、中部さんはその人をとても愛らしく思ってしまうのだ。

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彼らが帰ったあと、中部さんにその人のパット話をどう思ったのか、聞いてみた。

「わずか1メートルの距離に悩み苦しむ。子供だってポンと入れてしまえるような短い距離です。それが大の大人がやって入らない。外れれば周囲は笑い、自分は恥ずかしくなる。入れば当たり前で、誰も褒めてなどしてくれない。まったく嫌な距離ですよね。私だって本当に嫌だなと思ってしまう距離です。

大きな試合の最初のホールで1メートルが残ったりする。外せばボギーなわけで、嫌でも緊張します。というのも最初のホールで外すと、この日はずっと1メートルを外しかねない。『入らない悪魔』が取り憑いちゃう。そういう日はやたら1メートルが残るんです。だから、最初に入れてしまって、『入らない悪魔』を退治してしまわないといけない。鬼退治ですね。だから緊張します」

1メートルを徹底的に練習するのです

わずか1メートルの距離イラスト

最初のホールで1メートルのパットが残る。入っても入らなくても、心臓に悪い。中部さんは持参している「救心」という薬を飲むことになる。中部さんでも大変な1メートルなのである。

「ですから、普段から1メートルのパットは練習しました。練習ならほとんど百発百中で入る。入るから面白くないけれど、やらなきゃいけない。

それも自分にプレッシャーをかけるようにする。100球すべて入るまでパット練習を止めない、外れたらまた一からやり直しというルールを自分に課せるわけです」

中部さんがいつもより早口で話しているように感じてしまう。「ボールをたくさん用意して1メートルのところに置いておくんですね。こうして始めるわけですが、10球までは簡単に入ります。20球、30球、50球を超えて、70球、80球、そして、90球となった頃から徐々に何かがおかしくなる。

さっさと練習を終えてホテルに戻ってシャワーを浴びて夕ごはんを食べたい。そう思ってしまうからか、96球とかで外すんです。で、また一からやり直しです。本当ですよ、やってご覧なさい。100球連続でカップインすることがどれほど大変なことかがわかりますから」

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中部さんは当時の練習を思い出しているようだ。「そりゃあね、100球目は緊張しますよ。練習なのにね。大きく深呼吸なんかしたりして、しっかり狙いを定めて、ボールに集中して、打つわけです。こうして、ようやく100球目が入ったときは本当に嬉しいもんです。達成感があります。自信も付きます。集中力が付いた気がするものです。

なぜなら、90を超えて外すのは、結局集中力の欠如が原因なのです。入れたい、外したくないと思って、気が散るんですね」それって、本番の試合の時と一緒である。それも緊張する最初のホールでの1メートルのパットの心境である。

「そうなんです。だから100球連続カップインの練習をしなくてはいけない。それは優勝がかかったときの1メートルも一緒です。1メートルはプロだって絶対に入る距離ではないのです。毎日、何時間もパット練習しているプロだって、ウィニングパットが1メートルならプレッシャーもハンパではありません。だから、プロは1メートルを徹底的に練習するのです。『鬼退治』に備えるわけです」

ロングパットは安全運転

中部銀次郎

では、中部さんはロングパットはどのように考えていたのだろう。

「私のゴルフは2オン2パットが基本でしたから、常に1発で入れようとは考えていませんでした。オールドマンパーのゴルフで安全運転を心掛けていましたので。

無理にバーディを狙って3パットしてボギーにすることはなかったです。やらなくてもよいボギーだと考えていました。

ですから、しっかり寄せて、できればOKの距離にしてタップイン。エネルギーを消耗させずに次のホールに向かう。

そういうゴルフをしていればバーディが出なくても流れは良くなっていきます。いずれ、バーディが転がり込んでくる。そういうものです。

いつでもバーディを狙って、3パットするうちに、心が疲れてきて、入ってもよいパットまで外れる。良い流れを作るには3パットをしないことです」

ラインを読むのは推理ゲーム

中部さんはロングパットのラインをキャディさんに尋ねることはなかった。いつでも自分一人でラインを読んでパットをしていた。

「アマチュアの中には、どんなパットでもキャディさんにラインを聞く人っていますよね。誰が見てもわかるラインをわざわざ聞く。不安なのでしょうが、そこまで聞くのかとちょっと見苦しく見えますよね。それにキャディさんだってすべてのラインが読めるわけじゃない。それを外れたのはお前のせいだなんて言ったりしたらジェントルマンではありません。キャディさんの言ったことを信じて打ったのはあなた。すべてあなたの責任。ゴルフではすべては自己責任なんです」

しかし、中部さんがキャディさんにラインを聞かない本当の訳はそんなことではなかった。

「ゴルフで最も面白いのはパットのラインを読むことなのです。どう曲がるのか、どれくらいのスピードで打てばよいのか、それを考えるのが面白いわけです。言ってみれば推理小説を読むようなものです。誰が犯人かを考えるのが面白いのに、先に犯人を聞いちゃう。キャディさんにラインを聞いてしまうのは、犯人を聞いてしまうのと同じことです。

最も面白い所をやらなくてどうするのでしょう。そう私は思います。ラインを読むのは推理ゲームなのです。推理を楽しむことが大事ですね。そうすれば、やがてラインを読むことができるようになる。しっかりカップに寄せて、3パットしなくても済むようになりますね」

ラインを読むのは推理小説を読むのと同じ。なるほどである。

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中部銀次郎

中部銀次郎(なかべ・ぎんじろう)

1942年1月16日、山口県下関生まれ。
2001年12月14日逝去。大洋漁業(現・マルハニチロ)の副社長兼林兼産業社長を務めた中部利三郎の三男(四人兄弟の末っ子)として生まれる。10歳のときに父の手ほどきでゴルフを始め、下関西高校2年生時に関西学生選手権を大学生に混じって出場、優勝を遂げて一躍有名となる。

甲南大学2年時の1962年に日本アマチュア選手権に初優勝を果たす。以来、64、66、67、74、78年と計6度の優勝を成し遂げた。未だに破られていない前人未踏の大記録である。67年には当時のプロトーナメントであった西日本オープンで並み居るプロを退けて優勝、「プロより強いアマチュア」と呼ばれた。59歳で亡くなるまで東京ゴルフ倶楽部ハンデ+1。遺した言葉は未だに多くのゴルファーのバイブルとなっている。

著者・本條 強(ほんじょう・つよし)

1956年7月12日、東京生まれ。武蔵丘短期大学客員教授。
『書斎のゴルフ』元編集長。著書に『中部銀次郎 ゴルフ珠玉の言霊』『中部銀次郎 ゴルフの要諦』『中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考』(いずれも日本経済新聞出版編集部)他、多数。


伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」

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