ロングパットは「ボールがコロがるスピード」をイメージすることが成功のカギ!
大西翔太コーチが教える「ゴルフスイングのツボ」 VOL.9
理論をわかりやすく展開し、実戦ですぐに役立つレッスンで大人気の大西翔太コーチ。
その大西コーチが、誰も知らなかったゴルフスイングのツボをこっそり教えてくれた。第9回はロングパットの打ち方のポイントをレクチャー。10メートル以上の長いパットが寄るようになれば、それだけで大幅なスコアアップが望める。
カップを大きな円と仮定し、アプローチ感覚でストロークすればタッチが合いやすい
打つ前にカップを見て素振りを繰り返し、距離感をつかんでおくことが大切
皆さん、こんにちは。ツアープロコーチの大西翔太です。今回はロングパットの打ち方をレッスンしていきたいと思います。「スコアメークのカギはショートゲームにある」とよくいいますね。ショートゲームでもとくに重要なのはパッティングです。ホールアウトして「今日も3パットをいっぱい打っちゃったよ〜」と嘆く方が多くいらっしゃいますが、その原因はどこにあると思いますか?
一番の原因はロングパットがカップの近くに寄らないことです。10メートルくらいの長いパットの距離感やタッチが合わないと、2〜3メートルも手前にショートしたり、オーバーしたりでセカンドパットも入る確率が低くなってしまいます。どうすればロングパットをカップの近くに寄せられるようになるかというと、スタート前のパット練習が必須です。プレー当日のグリーンの芝の刈り具合や気象条件などで、ボールのコロがるスピードが変化しますから、練習グリーンで芝の状態を必ずテストしておきましょう。ボールを2〜3個用意し、10〜15メートル先のカップを目標にボールをコロがします。カップに入れるよりも、カップの近くに止めることが優先です。何球かコロがすと、「今日のグリーンは速いな」とか「いつもよりコロがりが遅いな」など感覚がつかめてきます。この感覚をその日の距離感の基準にしましょう。
スタート前のパット練習をいつもしているのに、それでも距離感が合わないという人は、「10メートルならこのくらいの振り幅かな?」などと理屈で考えていませんか? そこでボールを右手で持ち、下手投げで転がす練習もしてみてください。カップまで15メートルとして、カップを見ながら右腕の素振りを数回繰り返してからコロがしましょう。目で見た感覚は思った以上に正確ですから、パターを持って打つよりも右手でコロがしたほうがカップの近くに寄りやすいことに気づくでしょう。右手でコロがすときは、「右腕をどのくらいの大きさで振ろうかな」なんて考えないはず。「ボールをどのくらいのスピードでコロがせば、カップの近くで止まってくれるかな」と感覚でイメージしますよね。このイメージによって右腕を振る大きさやスピードが自然と決まるのです。
ロングパットを打つときは構える前に、カップを見たままで数回素振りをしましょう。右手でボールをコロがすのと同じ感覚で右手だけで素振りしてもいいですし、両手で素振りしても構いません。重要なのはボールがコロがっていくスピードをイメージしながら素振りすること。プロやシングルゴルファーはボールの初速、中速、終速を3段階でイメージしています。スピードの変化も含めてイメージすることを習慣づけるとロングパットがどんどんうまくなります。
グリーンの傾斜もありますから、もちろんラインも読まないといけません。ロングパットは方向よりも距離感が大事といいますが、方向もある程度合わせないとタッチが合いにくくなります。そこで直径10・8センチのカップを大きな円でイメージするといいと思います。たとえばカメラマンがよく使うレフ版。直径60〜70センチくらいの円を想定し、その円の中で止める気持ちでストロークするのです。「入れよう」と自分にプレッシャーをかけるとタッチが合いにくいけれど、「寄せよう」と思えば案外円の中、もしくは円の近くで止めやすくなります。ロングパットはアプローチ感覚で打つのがカギなのです。
ハンドアップに構えて手首をロック。あとはお腹の回転でストロークするだけでいい
ロングパットのストロークで注意してほしいのは、腕や手に頼らないでパターを振るということです。長い距離をコロがしますから、インパクトで手首をこねてパンチを入れるように打つ人をよく見ますが、手先の動きでストロークしてはフェースの向きやストローク軌道に誤差が生じやすく、インパクトの打点が安定しにくくなります。それが距離感も狂いやすいので、手首をできるだけ固定し、大時計の振り子のイメージでパターヘッドを等速で振りましょう。
実をいえば、ストローク中に動かすのはお腹だけです。構えたときのグリップエンドとお腹の間隔をキープし、お腹を左右に回転するのです。カップまでの距離は遠くなるほどストロークの振幅が大きくなり、お腹の運動量も増えますが、腕や手は何もしません。
パットの名手といわれるタイガー・ウッズもそうです。手と腕しか動いていないように見えますが、構えたときの両ワキのほどよい締まり感覚や両肩と両腕の五角形をまったく変えないで、お腹だけを動かしてストロークしています。手を使わずに体幹で打っているから小さめのストロークでも分厚いインパクトでボールをヒットでき、ボールがスムーズにコロがるのです。
ストローク中に手首の無駄な動きを封じるには、ハンドアップに構えるのも大事なポイント。ボールの近くに立ち、両ヒジを軽く曲げてパターを上から吊るすようなアドレスです。ヒジから先とパターのシャフトが真っすぐとなるように構えれば、手首がロックされてストローク中にフェース面をスクエアにキープしやすく、フェースの芯でとらえやすくなります。手元を低くしてハンドダウンに構えると手首に角度がついてフェースが開閉しやすいので注意してください。
またボールのコロがりをスムーズにするにはボールにオーバースピンをかけるつもりで、ややアッパー軌道でインパクトするのがベターです。上からヒットするとフェースがかぶって当たり、ボールが一瞬ポコッと跳ねてからコロがるため、距離感が合いにくくなります。練習グリーンの上にボールマークを刺し、そのすぐ先にボールを置いてパターヘッドがボールマークに振れないように軽いアッパー軌道で打つ練習をするとコロがりのいいロングパットが身につきます。
最後に動画でチェック!
ロングパットはボールがコロがるスピードをイメージして、アプローチ感覚でストロークすればカップの近くに寄せやすい!
※動画はショット音が流れますので音量にご注意ください。
大西翔太
おおにし・しょうた/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアの育成に尽力する一方で、青木瀬令奈のコーチもつとめる。メンタルやフィジカルの知識も豊富。女子ツアープロの大西葵は実妹。
取材・文/三代 崇
写真/渡辺義孝
協力/船橋カントリークラブ
【シリーズ一覧】
●第1回:テークバックの始動で左前腕部を少し「外旋」させるのが真っすぐ飛ばすコツ
●第2回:バックスイングでは左ヒザをなるべく動かさないように「我慢」しよう
●第3回:手やグリップをカラダから遠ざける感覚でダウンスイングしよう
●第4回:今どきのアイアンは、スイング軌道の最下点でボールをとらえるのがいい
●第5回:タオルを使った練習法でスイング軌道とクラブの入射角を整えよう
●第6回:アプローチの打ち方はシンプルがベスト! 手先に頼った複雑なスイングはもうやめよう
●第7回:歩く動作のナチュラル感覚をアプローチスイングに応用する
●第8回:ボールの1個手前をめがけて、クラブを鈍角に入れるのが今風のバンカーショット
●第9回:カップを大きな円と仮定し、アプローチ感覚でストロークすればタッチが合いやすい
●第10回:タイガーのようにカップを狙い撃ちするつもりでストロークするのがコツ!
●第11回:フェースよりもソールを使うことを意識するとグッドショットの確率アップ