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ナイスショットは使用禁止?褒め上手なゴルファーは最後に勝つ!

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第39回

2022/10/18 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場,グリーン

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

例えば、ナイスインの本当の正解を考えてみる

ゴルフ場,ラウンド
写真提供/篠原嗣典

「あの“ナイスイン”の説明文は間違っているよね?」リスペクトしている大先輩から確認されました。
問題になっているのは、ゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】の第34回の次の部分です。

「ナイスインは、パーやバーディではなく、ピンチを乗り越えてボギーで収めたときなどのカップイン時に声がけします」

初心者でも簡単な褒め言葉の声掛けはしてみようということで、ナイスインを推した内容があって、その後に注釈的に書かれていた一文です。

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「あれは、編集者が付け足した部分で、僕の文章ではありません。まあ、そういう見解なのかなぁ、と思って、強いて修正のお願いしなかったんです」と説明しました。言い逃れではなく、本当のことでした。

大先輩は納得せずに、修正すべきだ、と強く言うので、実は…と本音の話をしました。放置したのは、読者の反応を見て、別の回のエッセイのネタになるかもしれないという下心があったのです。

その先輩以外にその部分について疑問があると連絡があったのは一人だけでしたが、今回のテーマは「褒め言葉の声掛けについてもう少し考えてみよう」です。

ゴルフにおいて、褒め言葉の掛け声は、ローカルルール的で、絶対的な正解はなく、ゴルフコースの伝統的な考え方や、そのゴルファーが接してきたゴルファーの伝聞で判断されているのが実態です。

ナイスなゴルファーの声掛け

問題になっているナイスインの場合、あの注釈を正解だと考える集団は、かなり狭い範囲だと思われます。広く使われているナイスインの意味合いは、ホールインしたパットなら、それが何打目でも使用できる褒め言葉です。誰も傷つけず、汎用性が高く、使いやすいところがナイスインの素晴らしいところなのです。

30センチのパットをお先にしても、ナイスインですか?と反論する人もいますが、僕はゴルフ歴40数年で30センチのパットを何度も外したことがあります。
むずかしいラインということもありますし、その時々の状況もありますが、パッティングに100%はないのです。だから、30センチのパットにナイスインと声掛けすることも多々あります。

自分の価値観を押し付けるよりも、なんでもナイスインだと考えるほうが、ナイスなゴルファーとして認め合いやすいのが現実です。
また、ナイスインには、「よく頑張った」とか「ドンマイ」とか、そういう意味合いを含ませることも可能です。

個人的には、無礼で無粋なワガママに過ぎないと軽蔑しますが、褒め言葉に対して「今のはナイスじゃない!」と逆ギレする人がいます。そういうときでも、「僕にとっては、あれは、十分にナイスインですから」と笑顔でサラッと言えるのも、ナイスインの優秀なところなのです。

ナイスパットも良い褒め言葉です

注釈にあったようなピンチを救うパットに相応しい褒め言葉は、ナイスパットです。これは、難しいラインのパットや長い距離のパットが決まったときにも使えますし、3パットの危機をナイスタッチの素晴らしいパットで回避したようなホールインしないケースでも使える言葉です。

注釈のようなパーやバーディではなく、ピンチを乗り越えてボギーで収めたときなら、僕が親しくて互いをよく知っているゴルファー相手であれば、ナイスボギーと敬意を込めて声掛けするかもしれません。

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ナイスオンで見えてくる伝統と心配りと雰囲気を考える

ゴルフ場,グリーン

日本を代表するような超名門コースでプレーをしてきた人が、自慢気にこんな話をすることがあります。

「今まで知らなかったのだけど、パー3とかでグリーンに乗った場合にワンピン以内にボールが止まったときだけ、ナイスオンって声掛けするのが正式な決まりなんだってよ」

ビジターで来場している人に、そのようなお願いをしているコースは存在します。遠くに乗ったのは、ときにはミスショットだったりするし、本当のナイスショットだけに褒め言葉は使おう、という考慮らしいのですが…

「当コースでは、という前置きがあったはずです。それが絶対であるという主張ではないですよ」というように誤解していることを伝えるようにしています。

元々、ナイスオンという褒め言葉を使いまくるのは、日本だけの特徴なのです。英語圏のゴルファーとプレーすると、ナイスオンしても「Good」というひと言だったりします。

元祖は欧米だから、それが正解だという主張には賛同しかねます。ゴルフの精神の神髄は、心配りです。相手を讃える気持ちで、ナイスオンや、ナイスショットを連発することは、文化として大事にするべきだと考えているからです。日本人の心配りや、空気を読む文化が、ゴルフと融合して、良い意味で『らしさ』を発揮するのは悪くないことです。

先程のコースで僕がプレーしたときは、そのコースの決まりに従うのが正解なのでその通りにしましたが、明らかな良いショットがグリーンに乗ったのに、ピンの逆サイドだったりしたらシーンと静かにしているのはかなりの苦痛を伴いました。

そもそも、何でもかんでもピンに向かって猪突猛進するゴルフを否定はしませんが、それを卒業することで飛躍的にレベルが上がる実例がたくさんあることを考えると、ベタピンだけが評価されるなんて、さり気なくレベルが低い人たちの集まりなのだと公言しているようで、ゴルフは残酷だなぁと怖くなったのでした。

若い頃の”怒られ”エピソード

ゴルフは静寂のゲームだという名言がありますが、それは騒音がないという意味です。褒め言葉は注意さえすれば騒音にはなりません。

僕が10代の頃、褒め言葉を徐々に使い熟している自分に酔っていた時期がありました。ゴルファーとして自分がレベルアップしていると調子に乗っていたのです。同伴者が、長いバーディーパットを決めたときに、本当にスゴいという気持ちを込めて言いました。

「ナイスバーディー!!」

当人からひと言、とても小さな声で言われました。

「うるさい」

僕は元々声が大きいのに、隣のホールに聞こえるようなボリュームで「ナイスバーディー」と発声しました。
「悪気がないことはわかるけれど、一つの用語以外は、当事者の耳に届くボリュームで十分」と教えられたのです。顔が真っ赤になって、頬が熱くなったのをハッキリ覚えています。

あれから40年ぐらい経ちましたが、アドバイスを活かして、渋く囁くように褒め言葉を使えているか?
時々、自問自答をしながらラウンドをしています。

若いゴルファーが増えてコースが騒がしくなった、と苦言を呈するオールドゴルファーがいますが、耳を澄ませば、昔の僕のように仲間内で褒め合っている大声が聞こえることがあります。彼らが、本当にゴルフが好きなら、ゴルフの神様はあのときの僕のようなきっかけを作るはずです。このエッセイが、その一つになれば、作家冥利に尽きます。

ちなみに、10代の僕を叱ってくれたゴルファーが言っていた例外的に大声を出す用語は「フォー」です。
ファーと表記しているケースがありますが、正式には、フォーで、これは世界共通ですから、そちらで発声し、覚えるのが正解です。危険を知らせるこの掛け声は、隣のホールまで聞こえるボリュームが不可欠です。

蛇足ですが、「フォーーー」と語尾を伸ばすのは、日本とその影響を受けたアジア圏のゴルファーやキャディだけです。海外のゴルフ中継など見てもわかりますが、伸ばさずに「フォ!!」を一発か、数発、発声するのがグローバルスタンダードです。

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ゴルフ場,グリーン
写真提供/篠原嗣典

「ゴルフの褒め言葉は難しくて面倒臭い。だから黙っていれば良い」という人もいます。それはベストではないがベターな方法だと、コツのように広げようとしている動きもあるそうです。
うるさいよりも、静かなほうが良いじゃないか、と意見も聞いたことがあります。

その一方で、褒め言葉を挨拶のように、そつなく交わし合う上級者も育っています。ここがポイントなのです。

挨拶を交わしている中で、無言で佇む人は良い印象を持たれないことが多く、損をするのは世の中の常です。回避できるなら、防ぐのが正解であることは書くまでもありません。

つまり、褒め言葉という掛け声は、コミュニケーションとして考えれば良いのです。
初心者や自信がない場合は、ストロークの直後でなくともカートなどで一緒になったらこんなふうに使うのもアリです。

「今のスゴかったですね」
「感心しました」

カワイイ感じを前面に出しつつ、パチパチと無音の拍手をするのも、裏技としては十分に使えます。遠くから別の組に向かって、ジェスチャーで賛辞を伝える意味では、オジさんゴルファーでも、パチパチは応用できます。

全ての褒め言葉は、発するサイドの心配りが、受け取るサイドに伝われば良いのです。受け手も大きな心でそれらを受け止めることを徹底すれば、巷で言われるような難しさは半分になります。

昨年ですが、初めて会った同年代の同伴者から、彼の腕時計の数字を見せられながら「267ヤードしか飛んでいません。ナイスショットは270ヤード以上飛んだとき以外は言わないでください」と注意されました。馬鹿馬鹿しい、と思いましたが、反論はしませんでした。
そもそも、僕は彼のショットにナイスショットと声掛けはしていませんでしたし、反論して空気が悪くなると他の同伴者の迷惑になると考えたからです。

「了解です」と返事をして、「グッショ!(Good Shot の意味)」「ビュート(美しい弾道、というBeautifulのスラング的な用語)」と声掛けするようにしていました。

無礼な人は、無視することも一つの方法ですが、こちらの気分も下がるので、抗議されたら、次々に褒め言葉を変えて挑もうと決意したのです。その後は、特に抗議もなく、ゴルフができました。

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ゴルフをより楽しむため、褒め上手なゴルファーを目指そう

ゴルフは、ミスには無言で対応することで励ますという文化を持っています。裏と表、光と影。褒め言葉が使えてこそ、無言の励ましが効くのです。

そのコースや、集まりの決まりがあれば、それに従うのは当たり前として、基本的には、自分の気持ちを伝える方法として、自分らしい褒め言葉を使えば良いのです。ベテランゴルファーの使用している言葉を引き継ぐのもアリですし、日本語だって問題ありません。

さてさて、色々と書いてきましたが、冒頭の編集者がつけた注釈も、受け手のパッティングのレベルの低さと器の狭さが合体した悪い体験が伝聞した結果、使える範囲が変な風に小さくなってしまった例だと思います。よって、間違いではないのです。

大事なことは、ビビって、褒め言葉の掛け声を遠慮することは、自分だけが損をする最悪の選択だということです。
失敗しても、とにかく経験を増やすことが最終的にはゴルファーとしての自らの印象を良くするのです。

挨拶みたいに考えてみましょう。会釈もありますし、深くお辞儀をすることもあります。使用する言葉も、ケースバイケースでたくさんあります。使い分けの巧さが挨拶上手の基本です。
更に、対面しているわけですから、ニュアンスを入れることができることを有効に使うのが、レベルアップのコツになるのです。

純粋な気持ちで褒め上手なゴルファーを目指す

初心者から初級者、そして、中級者とステップアップしていく中で、自然と打てることが増えていくように、褒め言葉の掛け声も、どんどん自然になっていきます。ゴルフをより楽しむためのプレー中の応援合戦が褒め言葉の掛け声の基本です。

スコアアップする快感は強烈ですが、一過性なものなのです。ゴルフの褒め言葉の掛け声のレベルアップは、自分のゴルファーとしての評価としてスコアよりも重く見られる要因になることもあります。

まぐれ的なラッキーの意味合いがある「ナイス」を何でも頭につけて、褒め言葉として使うのはやめようという考え方も聞きますが、八百万の神々を信仰してきた日本人の魂のDNAを持ち出すまでもなく、全てに感謝、褒められるものは褒めようという心意気、日本語の多様な特殊性等々を鑑みれば…
とにかく、純粋な気持ちで褒め上手なゴルファーを目指すのは自然なことのように思えてくるのです。

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篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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