“ホーガン流”強いアイアンスイングの作り方〜 “負ける左腕”が生む低いフォロー
アイアンが際立つ!強いスイングの作り方[第8回]
スナップ動作で叩きつつ、風に強い低弾道を安定させるには、低いフォローが不可欠。「それには左サイド、特に左腕が邪魔にならないように“負ける”感覚が有効」と森プロ。ホーガン流の“左腕の負け方”とは?
GOLF TODAY本誌 No.583 73〜77ページより
ホーガン流スイング作り【課題7】左腕の“負け方”を覚える
低い振り抜きはスナップを促す左腕がポイント
フォロースルーの動きはダウンスイングの結果、自然と出来上がるもの。ホーガンはそう考えていたようだが、森プロは弾道のイメージで変わるという。
「たとえばタイガー・ウッズは、スティンガー(低いライナー)を打つ場合は意識的に低く振り抜きます。実際には振り抜き方をイメージすることでダウンも変わっているのかもしれませんが、フォロースルーを意識することはスイング作りでは有効なんです」(森)
ホーガンの場合は、テキサスの風の中で低い強弾道を打つ感覚が身についていたはず。
「だからホーガンは、フォローが低く長かった。それにはインパクトでのスナップ動作を受けて、左腕が〝負ける〟動き方をする必要があったんです。これはホーガンには自然な動きだったのかもしれませんが、ホーガン流スイングをマスターするには欠かせないポイントだと思います」(森)
左腕を強く張りすぎるとヘッドを跳ね上げてしまう
弾道を安定させるのは低く長いフォローがカギ
左肩より低く振り抜ける
<左腕を短く使うヒント>「皿回しドリル」で正しい〝負け方〟を知る(皿回しドリル)
STEP 1 腕だけで回す
STEP 2 ハーフスイング
風に強い低弾道は“負ける左腕”が生む!
皿回しリストワークならフェースは下向きで収まる
「スナップ動作に対して左ヒジの引き付け、左手首のヒンジングを促してヘッドを低く振り抜いていくと、フェースの左右のターンは抑えやすい。結果、フィニッシュではトウではなく、フェースが下を向いて収まります」(森)
〝左腕を短く〟で右手を支点にヘッドは下がる
「ホーガンは初期のフックグリップのころから、低弾道を打つために低く振り抜いていたはず。スナップ動作との兼ね合いでそれができるのは〝負ける左腕〟だけなんです」(森)
具体的には、右手のスナップ動作に反応して、左手首がヒンジング、左ヒジが曲がって縮む動き。「能動的に左ヒジを引いたり、左手首を曲げたりすると引っかけなどのミスになります。あくまでもスナップ動作によるヘッドの走りを邪魔しない〝受け〟の動きとして縮むこと。だから〝負ける〟ということなんです」(森)
スナップ動作では右手が支点。左手でグリップエンドを引き上げるとヘッドは下がって低く動く。「この動きならインパクトゾーンが長くなり、フェースターンも抑えられる。フルショットでは遠心力で腕が伸びて見えますが、アプローチでは縮める動きが明確になっています」(森)
ベン・ホーガン(Ben Hogan、1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173㎝、体重68㎏。ツアー通算64勝。
メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト
森 守洋
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
取材協力/東京ゴルフスタジオ
●アイアンが際立つ!強いスイングの作り方 シリーズ一覧
第1回:スイングを育てる流れとは?
第2回:「フックで飛ばす」動きとは?
第3回:スナップ動作から作る「プレーン」
第4回:強い風に揺らがない「アドレス」
第5回:スタンスを“スクエアにしない”理由
第6回:スナップを磨くパッティング
第7回:アプローチを作る「ワッグル」
第8回:“負ける左腕”が生む低いフォロー
第9回:“トップで止まらない「切り返し」の理由
第10回:ホーガンの「フック病」が長引いた理由
第11回:常勝を呼び込んだグリップ改造の正体とは?