アイアンショットでの強いインパクトの作り方|教えて!ホーガン先生
“史上最高のショットメーカー”と称されるグランドスラマー、ベン・ホーガン。その著書『モダン・ゴルフ』などに示されたスイング理論のエッセンスは、現代でも普遍。その内容を読み解いて、自分史上最高のアイアンショットを手に入れよう!
【ベン・ホーガン(Ben Hogan)】
アメリカ・テキサス州出身。身長173㎝、体重68㎏。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
【森 守洋/ホーガンアナリスト】
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
タイガー・ウッズにも受け継がれているホーガンのスイング理論
ホーガンを含む“グランドスラマー(4大メジャー優勝者)”に共通しているのは、体格を上回る飛ばしの能力と、精度の高いアイアンショットをリピータブルに生み出せるスイングの持ち主ということ。
1930年代に木製のヒッコリーシャフトからスチールシャフトに移行し、より効率の良い スイング理論を模索し、体現したのがベン・ホーガンだった。
ホーガンのスイングを研究している森守洋プロはこう語る。 「クラブとしてのアイアンの基本構造はほとんど当時と変わりません。だから、ホーガンの理論はセルヒオ・ガルシアやタイガー・ウッズにも受け継がれています」
そもそも強いインパクトって何?
ヘッドスピードが速くなくても“強さ”は得られる
フックで飛ばして19歳でプロ入りしたホーガンが勝つために求めていたのは、ショットの精度。 「このスイング技術を著書『モダ ン・ゴルフ』などから読み解くには、インパクトから逆算していくといいでしょう。正しいイメージのインパクトを求めて、クラブの 動き、それに合った身体の動きが見えてくるはずです」(森)
正しいイメージとは?「まず、ヘッドの動きに注目。飛んで曲がらないヘッドの動き方がインパクトの“強さ”を生みます。 インパクトが強い、というのはエネルギーが効率よく伝わるということ。これはヘッドスピードが遅 くても、可能です。ヘッドとボー ルの接触時間が長くなる、つまり“厚い”当たり方をイメージしてください」(森)
「グリップや手の動きなどの前に、クラブヘッドの動きから考えるべきです」(森)
インパクトが強い=厚い当たり方
手のヒラではたくような動かし方ではボールを押し込めない(左)。グッと押し込むイメージが手の動きにも影響する(右)。
ホーガンのインパクト、「弾く?」「押す?」アナタにはどう見える?
ホーガンのアイアンのインパクト。「弾いているのではなく、押し込む意識が手元に見える」と森プロ。では、押し込むヘッドの動きとは?
【これがホーガン流】押せるインパクトは「フェースを立てる」だ!
《ロフトを立てながら“圧縮”する意識が当たりを厚くする。》
ボールとの接触時間は1万分の5秒程度。これをわずかでも長くできるようにするには、ヘッドを“押し込む” しかない、と森プロ。
「フェースをそのまま真っすぐに当てるだけでは、ボールはすぐ弾かれてしまうか、フェースの上を滑って上方や右に逸れてしまいます。インパクトで“圧縮”された ボールが復元してフェースから離れようとするのを、フェースで追い続けて“圧縮”時間が延びるよう にするんです。 そのコツはフェースターンにあります。といっても、ヒールをトウが追い越すようなイメージだと左へのミスになります。正しいのは、ソールをトップブレードが追い越すイメージ。要は“フェースを立てる”ことです」(森)
開いたフェースを閉じながらインパクトすると、ボールがしっかりつかまって“圧縮”できる。ただし、方向が左右に散りやすいヨコ方向ではなく、ロフトを減らすようにするタテ方向のターンをイメージするのが正解だ
ヘッドを単純な円軌道でイメージすると、インパクト以降でフェースは上を向く。これではボールを“圧縮”できない。
ヘッド軌道をストレートにイメージすると、フェースターンが入らない。インパクトでボールはフェースを滑って逸れてしまう。
【あっ!これもホーガン流】石川遼が選んだ「フレループ」の効用
シャフト部分がカーブを描く練習器具『フレループ』。最近、片山晋呉や石川遼が練習に取り入れている。
「あれはまさにタテのフェースターンを確認するのに効果的です。先端の球をプレーンに沿ってスムーズに振り抜くには、フェースを立てるイメージで手元を下げる動きが必要。手元が浮いてプッシュアウトするのを矯正できます」(森)
GOLF TODAY本誌 No.553 58〜63ページより
<教えて!ホーガン先生>シリーズ
【第1回】アイアンショットでの強いインパクトの作り方
【第2回】アイアンのライン出しショットで重要な右グリップの握り方
【第3回】アイアンショットのインパクトを厚くする左グリップとは?
【第4回 Part1】アイアンショットが左に行かない「押す」フォローとは?(1/2)
【第4回 Part2】アイアンショットが左に行かない「押す」フォローとは?(1/2)
【第5回 Part1】タメても振り遅れないアイアンのダウンスイングとは?(1/2)
【第5回 Part2】タメても振り遅れないアイアンのダウンスイングとは?(2/2)
【第6回 Part1】アイアンのリピータブルなトップスイングの条件とは?(1/2)
【第6回 Part2】アイアンのリピータブルなトップスイングの条件とは?(2/2)
【第7回 Part1】“ホーガン流”アイアンスイングはトップの前後で「プレーン」が変わる?(1/2)
【第7回 Part2】“ホーガン流”アイアンスイングはトップの前後で「プレーン」が変わる?(2/2)
【第8回 Part1】ホーガンもアイアンのスイング動作に取り入れていた「カッピング」とは?(1/2)
【第8回 Part2】ホーガンもアイアンのスイング動作に取り入れていた「カッピング」とは?(2/2)
【第9回 Part1】ゴルフスイングのアドレスで両ヒザを「内向き」にするメリットは?(1/2)
【第9回 Part2】ゴルフスイングのアドレスで両ヒザを「内向き」にするメリットは?(2/2)
【第10回 Part1】アイアンの強いインパクト作りにはダウンで「右足の蹴り」は必要?(1/2)
【第10回 Part2】アイアンの強いインパクト作りにはダウンで「右足の蹴り」は必要?(2/2)
<教えて!ホーガン先生Ⅱ>シリーズ
【第11回 Part1】アイアンの飛距離が出るフェードボールの打ち方は“右に曲げない”(1/2)
【第1回 Part2】アイアンの飛距離が出るフェードボールの打ち方は“右に曲げない”(2/2)